5段階の成熟度モデル

工場のデジタル成熟度は、データがどの形で存在し、どこまでつながっているかで5段階に分けられます。

デジタル成熟度の5段階 L1 紙 L2 単独システム L3 データ統合 L4 分析活用 L5 自律化 AI-OCRで電子化 単工程の既製AI 予知保全・品質分析 横展開・計画最適化 自律制御・エージェント
工場のデジタル成熟度の5段階。AIが本格的に効くのはレベル3以降。
レベル状態データの形現実的なAIテーマ
L1 紙日報・検査記録・作業指示が紙や口頭紙、Excelの個人ファイルAI-OCRによる記録の電子化
L2 単独システム設備や工程ごとにシステムやデータはあるが、つながっていない設備ごとのログ、部門ごとのDB1工程で完結する外観検査、メーター読み取り
L3 データ統合設備データ・MES実績・品質記録がロット番号でつながる共通のキーで結べるデータ予知保全、品質の要因分析、AI判定のMES連携
L4 分析活用データ分析とAIが日常の判断に使われ、複数ラインに展開されている共通の命名規則で蓄積されたデータ横展開、需要予測と生産計画の連携
L5 自律化AIの判断で工程の一部が自動で調整されるリアルタイムで流れるデータと承認の仕組み自律制御、承認つきのAIエージェント

段階を判定する質問

自社の段階は、次の質問に答えると判定できます。工場全体ではなく、AIを検討しているラインや工程ごとに判定します。

日本の工場の多くは、L2とL3の間にいると考えられます。2026年版ものづくり白書では、一連の製造プロセスのデータを取得している事業者が66.0%、取得データを活用しているのは51.4%、効果が出たのは43.9%でした(RIETI BBL資料の抽出値)。規模による差も大きく、2025年版ものづくり白書の解説では、製造工程でデジタル技術を活用している割合は従業員301人以上で67.9%、50人以下で31.5%でした。

飛び級しない計画を立てる

成熟度の診断で大事なのは、今の段階より2つ以上上のAIテーマを計画しないことです。L2の工場でL4の横展開やL5の自律制御を計画すると、データの統合と体制づくりが追いつかず、PoCで止まります。

一方で、すべての工程をL3にしてからAIを始める必要もありません。L2の段階でも、1工程で完結する既製のAIツールは導入できます。重要なのは、そのツールの導入をL3に上がるきっかけとして使うことです。例えば外観検査AIを入れるときに、判定結果をロット番号つきで記録しておけば、後の品質分析につながります。

中国の智能工厂の4段階基準

段階の考え方は、海外の政策にも取り入れられています。中国の工業情報化部など6部門は、2025年6月から「智能工厂梯度培育」として、スマート工場を基础级・先进级・卓越级・领航级の4段階で認定しています。

  • 基础级:デジタル化の普及
  • 先进级:地域・業界の先導
  • 卓越级:全国の模範。AI応用シーンが20%以上(2025年版の要件)
  • 领航级:世界の模範。AI応用シーンが60%以上(同)

国家標準GB/T 39116-2020の成熟度で見ると、基础级・先进级は2級以上、卓越级は3級以上、领航级は4級以上が必要とされています。2025年末の累計は、基础级3.5万超、先进级8,200超、卓越级500超、领航级15でした(北京商报、2026年1月)。数のうえでも、大半の工場は下の2段階にあり、AIを広く使う段階に達しているのは一部です。中国の制度の詳細は 中国の智能工厂4段階 で解説しています。

基础级の智能工厂(2025年末累計)
3.5万超
工業情報化部(北京商报、2026年1月)
卓越级(AI応用シーン20%以上を要件とする段階)
500超
同
领航级(AI応用シーン60%以上を要件とする段階)
15
同

診断結果の使い方

診断の結果は、ラインや工程ごとに一覧にし、AIのテーマ選定とデータ整備の計画に使います。

  1. ラインごとにL1〜L5を判定し、判定の根拠(質問への回答)を残す
  2. 各ラインで、今の段階か1つ上の段階のAIテーマを候補にする
  3. 1つ上の段階に上がるために必要なデータ整備を、AIテーマと同じ計画に載せる
  4. 半年から1年ごとに再診断し、計画を見直す

DXとAIの順番の考え方は DXとAI導入の違い で、データの準備状況を詳しく点検する方法は AI導入前の製造データ準備 で扱っています。

よくある質問

工場全体で1つのレベルを判定すればよいですか

ラインや工程ごとに判定する方が役立ちます。同じ工場でも、新しいラインはL3、古いラインはL1ということがよくあり、AIのテーマもラインごとに変わるからです。

L3に上がるために最も効く投資は何ですか

多くの場合、MESなどで生産実績・品質判定・停止理由をロット番号つきで記録する仕組みと、設備データの命名規則の統一です。この2つで、設備データと品質の関係が分析できるようになります。

外部の成熟度診断サービスを使うべきですか

社内でこの記事の質問に答えるだけでも、おおよその段階は分かります。外部の診断が役立つのは、複数工場を同じ基準で比べたいときや、データ基盤の具体的な設計まで踏み込みたいときです。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。