SiteWiseの役割:収集とアセットモデル化

AWS IoT SiteWiseは、産業設備のデータを集め、設備の種類と階層に沿ってモデル化するためのAWSのサービスです。データ基盤全体の中では、設備から上がってくるタグの時系列に「どの工場のどのラインのどの設備の、何の値か」という構造を与える層にあたります。

製造業のデータ基盤を層で分けると、SiteWiseの位置は次のように整理できます。

層役割AWSでの主な担い手(例)
収集PLC・設備からデータを取り出す工場内のゲートウェイ、エッジ
モデル化設備の型と階層でデータに意味を付けるAWS IoT SiteWise
蓄積・分析長期保存、MESやERPのデータとの結合、学習データレイク・分析サービス
AI予測、異常検知、生成AIによる質問応答機械学習サービス、Amazon Bedrock

SiteWiseは、データ基盤のすべてを担う製品ではありません。MESのロットや作業指示、品質判定との結合や、長期の分析は、別のサービスや既存システムと組み合わせて作ります。

生成AIの保全アシスタントの構成

AWSは2024年5月の公式ブログで、Hannover Messe 2024のデモとして、Amazon BedrockとAWS IoT SiteWiseを組み合わせた保全員向けの生成AIアシスタントを紹介しました。設備のマニュアルや標準作業手順書(SOP)と、リアルタイムのIoTデータを使って、保全員の作業を支援するという構成です。

設備データをSiteWiseでモデル化し、マニュアルとSOPを文書検索の対象にして、生成AIが両方を参照して保全員の質問に答える構成 設備・センサ稼働・温度・振動 AWS IoT SiteWise設備の型と階層でモデル化 マニュアル・SOP保全記録 文書検索設備IDで絞り込む Amazon Bedrock生成AIが両方を根拠に回答 → 保全員
生成AI保全アシスタントの構成の考え方(AWSのデモ紹介をもとに編集部が整理)。文書と稼働データの2つを根拠にする。

この構成で精度を左右するのは、生成AIのモデルより、2つのデータのつなぎ方です。

  • 設備IDの一致:SiteWiseのモデル上の設備と、マニュアル・SOP・保全記録に書かれた設備名が同じIDで結び付いていること。結び付いていなければ、「この設備の今の状態」と「この設備の手順書」を同時に引けない
  • 数値は計算して渡す:「直近1週間の平均温度は」のような質問に、生成AIが数値を推測で答えないよう、数値はデータ側で集計した結果を渡す
  • 保全記録の構造化:過去の故障と対処の記録が自由記述のままだと、類似事例の検索精度が上がらない

生成AIを工場データにつなぐときの一般的な要件は生成AIを工場データにつなぐ前提条件、保全向け生成AI製品の比較は保全向け生成AIの比較で扱っています。

アセットモデルの設計で決めること

SiteWiseに限らず、設備データをモデル化する製品を使うときは、どの製品でも自社で次の設計が必要になります。製品の画面で設定を始める前に、表で決めておくと手戻りが減ります。

  1. 階層:工場・エリア・ライン・設備をどの粒度で分けるか。ISA-95の階層(Enterprise/Site/Area/Line/Cell)に合わせると、MESの設備マスタとの対応が取りやすい
  2. 設備の型:同じ種類の設備をまとめる型(射出成形機、プレス機、コンプレッサなど)と、型ごとに持つ計測項目
  3. 計測項目の名前と単位:型の中で計測項目の名前を揃える。設備ごとに違うPLCアドレスは、収集層で型の項目に対応付ける。命名の考え方は設備タグの命名規則を参照
  4. 計算項目:稼働率、サイクルタイム、エネルギー原単位などを、どの層で計算するか
  5. MESとのキー:設備ID、時刻、ロットをどう結び付けるか

導入前に確認すること

確認点理由
収集の方式工場内のゲートウェイで何を使い、PLCとどのプロトコルでつなぐか。OPC UAに対応した設備は接続しやすい
データの送り先と量高頻度のデータを全量クラウドに送ると費用が増える。エッジでの集計・間引きの設計が必要
回線障害時の動作回線が切れたときに、工場側でデータを保持して後から送れるか
MESとの結合SiteWiseの外で、MESのロット・作業指示とどう結合するか
料金・提供地域料金体系と日本リージョンでの提供機能を、最新の公式情報で確認する

よくある質問

SiteWiseだけでAIの予知保全はできますか?

SiteWiseは収集とモデル化の層で、予知保全のモデルそのものは別の機械学習サービスや製品で作ります。予知保全の進め方は予知保全のセクションで扱っています。

AWSの他の製造業向けの取り組みとの関係は?

AWSは2025年12月のre:Invent 2025で、顧客のデータセンターで専用AI基盤を動かすAWS AI Factoriesや、エージェント実行基盤Bedrock AgentCoreの機能追加を発表しています。全体像はAWSの製造業AI戦略で扱います。

他のクラウドの製造データ基盤と比べるには?

収集・文脈付与・保存・AI接続のどの層を担うかで比べるのが分かりやすい方法です。産業データ基盤6製品の比較を参照してください。

この記事に出てくる用語

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この特集について

AIは「データ基盤」で決まる

PoCは成功したのに本番で止まる。原因の多くはモデルではなく、MESと設備データの側にある 全130本

  1. MESとAIの関係:ロット・作業指示・品質判定がAIの精度を決める理由
  2. 製造業AIが本番で止まる7つの理由:PoCは成功したのにラインに載らない構造
  3. 製造業のAI-OCR:紙の検査記録・点検表・ミルシートをデータ化する手順
  4. データ基盤の段階的導入ロードマップ:ユースケースから逆算する8ステップ
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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。