免除と重要データの関係

网信办令第16号「促进和规范数据跨境流动规定」(2024年3月22日施行)の第3条は、跨国生产制造(多国籍の生産製造)などの活動で集めたデータについて、個人情報や重要データを含まなければ、越境の安全評価・標準契約・認証を不要としました。詳しくは中国データ越境規定(16号令)と日系工場で扱っています。

この免除には前提があります。データが重要データに当たらないことです。そして16号令は、重要データとして申告が必要なのは「当局が告知または公表したもの」に限ると定めています。現時点で自社のデータが告知されていなければ免除を使えますが、将来指定されれば使えなくなります。

論点現状(2026年10月時点の公開情報)
「跨国生产制造」の定義16号令の条文に定義はない
重要データの決まり方当局が告知・公表したものに限り申告が必要
工業分野の識別基準工信部が工業・通信分野の重要データ識別ガイドを出し、業界標準も作成中
分類分級の進め方2024〜2026年に、各省の売上上位10%の大型工業企業で分類分級をカバーする計画
重要データ取扱者の義務年1回以上のリスク評価

工信部の分類分級計画が意味すること

工信部の関係者は2024年6月、工業・通信分野のデータ越境について講演し、2024〜2026年に各省の売上上位10%の大型工業企業でデータの分類分級をカバーする計画を示しました(安全内参、2024年6月7日)。分類分級とは、企業が持つデータを種類ごとに整理し、一般データ・重要データ・核心データの等級に分ける作業です。

日系工場のなかにも、省内で売上上位10%に入る大型工場は少なくないと考えられます。そうした工場では、2026年までに自社のデータを分類分級する作業が求められる可能性があり、その過程で工程パラメータや製造技術に関するデータが重要データとして識別されるかどうかが論点になります。

さらに、2026年1月の「推动工业互联网平台高质量发展行动方案(2026—2028年)」は、工業インターネットの安全分類分級管理と、重要データの識別・備案を求めています(C114、2026年1月13日)。工業インターネット平台を使う工場は、平台側からもデータの分類を求められることになります。

重要データ指定の有無による越境手続きの違い 工程パラメータ品質データ・設備データ 指定なし第3条で手続き不要 重要データに指定免除は使えない 安全評価が必要年1回以上のリスク評価 分類分級(2024〜2026年)
工場データが重要データに指定された場合の影響。免除の前提が崩れ、越境の手続きが変わる。

どんな工場データが重要データになりうるか

工信部の識別ガイドの全文と、業種ごとの具体的な対象データは、今回の調査範囲では確認できていません。そのため以下は推測ですが、一般的な重要データの考え方(漏えいした場合に国家安全・経済運営・公共利益に影響しうるか)から、工場データを次のように分けて見積もることができます。

  • 重要データになりにくいと考えられるもの:個別設備の稼働・停止の記録、一般的な品質検査結果、生産実績
  • 指定の可能性を考慮すべきもの:先端製品の製造工程の条件(レシピ)、半導体・電池・素材などの戦略分野の工程データ、大規模な生産能力やサプライチェーン全体を示す集計データ
  • 業種によって判断が分かれるもの:エネルギー・化学プラントの運転データ、重要インフラに関わる設備データ

日系工場が今のうちにできること

規制の詳細が固まっていなくても、データ管理の側で備えられることはあります。AIやデータ基盤の設計と、規制対応の準備は同じ作業の表と裏です。

この台帳は、規制対応のためだけでなく、AIに使えるデータを棚卸しする作業そのものです。中国工业互联网研究院の鲁春丛院長は、多くの智能化改造プロジェクトで投資の50〜60%をデータエンジニアリングが占めると述べており、データの整理は中国国内でも最大の投資項目になっています。

データの名前や意味を揃えるためのモデルには、製造業の標準であるISA-95の情報モデルが使えます。ISA-95の4つの情報モデルも参照してください。データを外に出さずにAIを使う方法は中国工場のデータを外に出さないAIで扱っています。

よくある質問

工程パラメータは現時点で重要データですか?

当局から告知・公表されていなければ、16号令上、重要データとして申告する必要はありません。ただし工信部が分類分級を進めているため、業種や製品によっては今後指定される可能性があります。

分類分級の対象になるのはどんな企業ですか?

工信部の関係者は、2024〜2026年に各省の売上上位10%の大型工業企業で分類分級をカバーする計画を示しています。対象かどうかは所在する省の基準によります。

重要データを扱う場合、越境以外に義務はありますか?

重要データを扱う事業者は、年1回以上のリスク評価を行う必要があるとされています。越境する場合は安全評価が必要です。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。