剤形ごとの検査対象と難しさ

剤形主な検査対象AIの難しさ
錠剤欠け・割れ、汚れ、異物付着、刻印・印字の不良刻印の向きや表裏で見え方が変わる
PTPシート錠剤の欠落・割れ、シールの不良、印字アルミの反射、ポケットの透明樹脂の映り込み
アンプル・バイアル液中異物、ガラスの傷・割れ、液量、キャップ気泡と異物の区別、液の動き
カプセル凹み、割れ、色違い、結合不良2色カプセルの色ムラと不良の区別

国内では、ワキ製薬がフツパーの外観検査AI「メキキバイト」で錠剤シートの検査を45%速め、省人化したと公表されています(フツパー公式)。PTPシートのように対象の形が決まった検査は、AIの効果が出やすい領域です。

ワキ製薬の錠剤シート検査の高速化
45%
フツパー公式(2026年10月閲覧)
Merckの合成欠陥データによる外観検査の誤排除削減(複数製品ライン)
50%超
AWS(2024年5月)
PFUの検査設計自動化での欠陥検出率(照明・カメラ探索は約6時間→30分)
71.5%→85.1%
MONOist(2026年9月)

ポイント1:撮像を先に固める

外観検査AIの精度の大部分は撮像で決まります。欠陥が画像に写らなければ、どんなモデルでも検出できません。錠剤の刻印や欠けはローアングル照明、シートのアルミ面はドーム照明、アンプルの液中異物は容器を回転させて止めた直後の液の動きを撮る、というように、剤形と欠陥ごとに照明と撮り方を選びます。

照明とカメラ条件の探索を自動化する取り組みもあります。PFUは2026年9月、外観検査の設計を自動化する検証で、照明・カメラ条件の探索が約6時間から30分に短縮され、欠陥検出率が71.5%から85.1%に上がったと発表しました(NEDOのテーマで1位)。撮像の方式は外観検査AIの撮像・照明設計で解説しています。

ポイント2:再検査工程を設計する

医薬品の外観検査では、不良を見逃さないことが最優先です。そのため、AIの閾値は見逃しを抑える側に設定し、その結果として増える過検出(良品を不良と判定)を人の再検査で吸収する運用が一般的です。

全数をAIが一次判定し、明確な良品は通過、不良と判定があいまいな品は人の再検査に回し、再検査結果をロット記録と再学習に使う流れ 全数撮像 AI一次判定見逃し側に厳しく 良品として通過 グレー・不良判定 人の再検査で確定 判定結果をロット記録に残し、再学習の候補にする
医薬品の外観検査でAIと人の再検査を組み合わせる流れ。過検出品とグレーゾーンを人が確定する。

再検査の工数が多すぎると、省人化の効果が消えます。導入前に、AIが不良と判定する率(排除率)と、そのうち人が良品と確定する率を測り、再検査に何人必要かを見積もってください。Merckは、GANやVAEで合成した欠陥データを使って外観検査を改善し、複数の製品ラインで誤排除を50%超減らしたと紹介されています(AWS、2024年5月)。不良サンプルが少ない医薬品では、合成データで学習を補う方法も選択肢です。過検出の減らし方は外観検査AIの過検出を減らす7つの対策で扱っています。

ポイント3:GMPの記録とバリデーションに組み込む

医薬品の外観検査は品質記録の一部です。AIの判定結果、再検査の結果、使ったモデルの版を、ロットの製造記録に残す必要があります。モデルを再学習するときは変更管理の手続きが必要になるため、再学習の条件と再学習後の確認手順を、導入時に手順書にしておきます。

よくある質問

液中異物の検査にAIは使えますか

使えますが、気泡と異物の区別が難しいため、容器を回転させてから止める撮り方や、複数フレームでの動きの追跡と組み合わせることが多いです。撮像装置メーカーの既存の検査機にAIを追加する形も検討できます。

刻印や印字の検査はAIと文字認識のどちらを使いますか

ロット番号や使用期限のように文字そのものを照合する検査は、文字認識(OCR)と照合ロジックが向きます。刻印の欠けやかすれのように見た目の品質を判定する検査は、AIの異常検知が向きます。

不良サンプルが少ない場合はどうすればよいですか

良品だけで学習する異常検知から始め、不良サンプルは評価用に取っておく方法が一般的です。合成データで不良画像を増やす方法もありますが、合成画像で評価すると実際の性能を過大に見積もるため、評価には実物の不良を使ってください。

この記事に出てくる用語

用語集(日・英・中)をすべて見る

この特集について

外観検査AIの選び方

良品学習か不良学習か、撮像系を誰が持つか。精度の数字だけで選ばないための比較軸 全51本

  1. 外観検査AIとは?2つの学習方式と導入5ステップを製造現場の目線で解説
  2. 製造業のAI活用10領域:外観検査・予知保全から設計・技能伝承まで一覧
  3. 外観検査AI製品の比較軸10項目:学習方式・撮像系の範囲・エッジ対応・再学習の手間
  4. 自動車メーカーのAI活用:溶接・塗装検査から生産計画・フィジカルAIまで10用途
特集の記事をすべて見る →

この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。