生成AIの備案制度と件数
中国の「生成式人工智能服务管理暂行办法」は、网信办・发改委・教育部・科技部・工信部・公安部・广电总局の7部門が出し、2023年8月15日に施行されました。生成AIサービスを中国国内で公衆に提供する事業者に対して、安全評価と算法(アルゴリズム)備案の制度を定めています。
网信办の発表によると、2026年6月30日時点で生成AIサービスの備案は累計988件、登記は598件です。2026年5〜6月の2カ月だけで備案120件、登記68件が増えました(光明网、2026年7月10日)。网信办は備案と登記を分けて集計しており、自社のサービスがどちらの手続きに当たるかは、使っているモデルの出所によって変わるため個別に確認が必要です。
工業大模型も備案を取っている
工場向けの大規模言語モデルも、この一般向けの備案ルールに従っている例があります。浪潮集団の工業インターネット子会社である浪潮云洲は、自社の工業大模型について、深度合成算法の備案と生成AIサービスの備案の2つを取得しています(经济日报/新华网、2025年9月18日)。浪潮云洲は20超の業界エージェントを持ち、大企業40超、中小企業1000超にサービスを提供しています。
この例が示すのは、工業向けだから備案が不要という扱いにはなっておらず、外部の企業にサービスとして提供する以上、一般向けと同じ手続きを踏んでいるということです。
社内利用と外部提供の境目
暂行办法は、国内の公衆に対して生成AIサービスを提供する場合を規制の対象としています。ここから、日系工場が生成AIを使う場面を3つに分けて考えることができます。ただし、境目の判断は条文だけでは確定できないため、以下には推測を含みます。
| 場面 | 例 | 備案の要否の考え方 |
|---|---|---|
| 備案済みサービスを社内で使う | 通义千问・DeepSeekなど備案済みの国内サービスを社員が業務で使う | 利用者側としての備案は通常不要と考えられる。提供者側が備案済みであることを確認する |
| 自社で構築したモデルを社内だけで使う | 社内文書検索(RAG)、保全ナレッジ検索を自社サーバーで運用 | 公衆向けではないため対象外とする見方がある(推測)。外部の取引先にも開放すると判断が変わりうる |
| 外部の顧客・取引先に提供する | 顧客向けの技術サポートチャット、サプライヤー向けの生成AI機能、製品に組み込んだ生成AI | 公衆向けの提供に当たる可能性が高く、備案・登記の要否を確認する必要がある |
日本本社が運用する生成AIサービスを、中国拠点から使う場合も論点があります。入力した情報が日本のサーバーへ送られるため、データ越境規制の対象になりうるからです。中国工場の技術文書や作業者の情報を入力する場合は、中国データ越境規定(16号令)と日系工場の整理もあわせて確認してください。
他の規制とのつながり
生成AIの備案と並んで、工場向けに生成AIを使う日系企業が押さえておくべき規制があります。
- 「人工智能生成合成内容标识办法」(2025年9月1日施行):生成AIで作った文章・画像などに明示・暗黙(メタデータ)の表示を求める。製品マニュアルや販促資料を生成AIで作る場合に関係する。詳しくは中国のAI生成コンテンツ表示義務
- 「人工智能+制造」専項行動実施意見(2026年1月):「智能体分类分级管理体系」の構築と、エージェントの登録・認証・接入管理の検討を掲げている。工場のAIエージェントが将来、別の管理制度の対象になる可能性がある
よくある質問
中国工場で社員がDeepSeekを業務に使うのに備案は必要ですか?
利用者側として備案を取る必要は通常ないと考えられます。備案は生成AIサービスを公衆に提供する事業者側の手続きです。ただし、入力してよい情報の範囲などは社内ルールで定める必要があります。
工業向けの大規模言語モデルは備案が免除されますか?
免除されるとは限りません。浪潮云洲は工業大模型について、深度合成算法と生成AIサービスの2つの備案を取得しており、工業向けでも外部に提供する場合は一般向けと同じ手続きを踏んでいる例があります。
生成AIの備案はどれくらいのペースで増えていますか?
网信办の発表では、2026年6月30日時点で備案が累計988件、登記が598件で、2026年5〜6月の2カ月だけで備案120件、登記68件が増えました。制度の運用が定着し、手続きを取る事業者が増え続けていることが分かります。
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