MDEの構成:エッジ・データ層・エージェントの3段

Google Cloud(米国)のManufacturing Data Engine(MDE)は、工場のOT(設備・制御)、IT(ERP・MESなど)、ET(エンジニアリング)のデータを統合するデータとAIの層です。Google Cloudの公式ページ(2026年閲覧)によれば、構成は次の3段で説明されています。

下段に設備とLitmus製Manufacturing Connect、中段にMDEとBigQuery、右にSAP Business Data Cloud、上段にGeminiの3種のエージェントを配置した構成図 Manufacturing Connect(Litmus製エッジ)設備・PLC・SCADA / 270超の産業プロトコル Manufacturing Data EngineOT/IT/ETデータの統合(BigQuery上) SAP BusinessData Cloud QualityPerformance Agent MaintenanceAI Agent Productionscheduling agent ゼロコピー
Google Cloud MDEの構成。エッジ接続、データ統合、Geminiエージェントの3段で、SAPとはゼロコピーで連携する。
  1. エッジ接続:「Manufacturing Connect」はLitmus Automation(米国)がGoogle Cloud専用に開発したエッジ製品で、270超の産業プロトコルに対応します。設備やPLCからデータを取り出してMDEに送ります
  2. データ統合:MDEがOT/IT/ETデータを統合し、Google Cloudのデータ分析基盤BigQuery上で扱える形にします
  3. エージェント:MDE上でGemini Enterpriseが「Quality Performance Agent(品質)」「Maintenance AI Agent(保全)」「Production scheduling agent(生産スケジューリング)」を動かす構成が公式に示されています

MDEは2025年のHannover Messeで新リリースが発表されました。

課金とSAP連携:MDE自体は追加課金なし

公式ページによれば、MDE自体には追加の課金がなく、利用したクラウドリソース(ストレージ、計算、BigQueryの処理など)の消費分だけが課金されます。製品ライセンスとして年額を払う形ではないため、初期の導入費用は抑えやすい一方、データ量やクエリの量が増えると費用も増えます。

SAPとの連携では、「SAP Business Data Cloud Connect for BigQuery」により、SAPのデータとゼロコピー(データを複製せずに参照する方式)で双方向に連携できるとされています。ERPのデータを毎回コピーして同期する必要がないため、受注・在庫・原価のデータと工場データを組み合わせた分析がしやすくなります。

項目内容確認しておくこと
ライセンスMDE自体は追加課金なしクラウド消費の見積もり(データ量・クエリ頻度)
エッジLitmus製Manufacturing Connect、270超のプロトコル自社設備のPLC・通信方式が対応範囲に入るか、エッジ製品の費用
ERP連携SAPとゼロコピー双方向連携SAP以外のERPの場合の連携方式
AIGemini Enterpriseの品質・保全・計画エージェント各エージェントの提供状況と日本語対応

SI経由の販売戦略

Googleは2022年にMDEを最初に発表したとき、「SI(システムインテグレーター)を通じて拡大するのが最善」と述べ、SI経由で市場に出す方針を明言していました(Design News、2022年5月)。MDEは単体で完結する製品ではなく、エッジ・データモデル・ダッシュボード・エージェントを工場ごとに組み上げる必要があり、その作業をSIが担う前提です。

利用者側から見ると、SI経由の製品には次の特徴があります。

  • 工場ごとの要件に合わせて構成を作り込めるが、品質はSIの経験に左右される
  • 同じMDEでも、SIによって作るデータモデルやダッシュボードが違う
  • 将来SIを変える場合、作り込んだ部分の引き継ぎが課題になる

導入を検討する場合は、製品の機能だけでなく、SIが過去に構築した工場の事例と、作り込んだ成果物(データモデル定義、変換ロジック)の所有権を確認します。

MicrosoftやAWSとの違い

製造業向けのクラウド3社を比べると、Microsoftは ISA-95情報モデルとパートナー群、AWSは主権・独自モデル・エージェント統制の基盤、GoogleはLitmus製エッジとBigQuery・SAP連携を前面に出しています(Microsoft Fabricの製造データソリューション、AWSの製造業AI戦略)。

どれが優れているかは、自社の既存のERP・データ基盤・社内のクラウド標準によって変わります。すでに全社でBigQueryを使っている、ERPがSAPでBusiness Data Cloudを使う予定がある、といった条件があればGoogleが候補になります。

よくある質問

MDEは日本で使えますか?

Google Cloudの製品として公式ページが公開されていますが、日本での提供体制やGeminiエージェントの日本語対応は公開資料では確認できません。SI経由での提供が前提のため、国内でMDEの構築実績があるSIに確認するのが確実です。

Litmusのエッジ製品を使わずにMDEにデータを入れられますか?

公式ページはManufacturing Connect(Litmus製)をエッジ接続の構成要素として示しています。他のエッジ製品や既存のデータ基盤から取り込めるかは、構成次第でSIに確認が必要です。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。