非鉄金属の工程とAIの4つの使い方
| # | 使い方 | 対象工程 | 狙い | 必要なデータ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 溶解のエネルギー最適化 | 溶解炉・保持炉 | 燃料・電力の原単位削減 | 炉の温度、燃料・電力量、投入量、生産実績 |
| 2 | 圧延・押出の品質予測 | 圧延・押出 | 板厚・表面品質のばらつき低減 | 温度、速度、圧下量、材料ロット、検査結果 |
| 3 | 型式判別と取り違え防止 | ダイカスト・加工・出荷 | 異品の混入防止 | 製品画像、品番マスタ |
| 4 | 鋳造不良の予測と検査 | ダイカスト・鋳造 | 鋳巣・湯じわの低減 | 射出条件、金型温度、X線・外観検査結果 |
非鉄金属は、溶解ではエネルギー、圧延・押出ではプロセス品質、ダイカストでは不良と品種管理と、工程ごとに損失の中身が変わります。自社の主な工程で最も大きい損失から使い方を選びます。
使い方1:溶解のエネルギー最適化
アルミの溶解は大量の燃料や電力を使い、エネルギーコストが製造原価に大きく効きます。AIの前に必要なのは、炉ごとのエネルギー使用量を、投入量・品種・生産実績と同じ時間軸で記録することです。これがあれば、生産量で補正したエネルギー原単位を炉ごと・班ごとに比べ、無駄な保持時間や温度の上げすぎを見つけられます。
最適制御までの段階は工場の省エネAIで整理しています。効果を測る際は、生産量と品種構成で補正したベースラインと比べてください。
使い方2:中铝の業界大模型「坤安2.0」
中国のアルミ大手・中铝(Chinalco)は、有色金属業界向けの工業大模型「坤安2.0」を発表し、応用シーンを100超構築し、そのうち52を公開、業界データセットを8つ整備したと報じられています(人民日報・新華網、2026年1月)。個別のシーンごとの効果は公表されていませんが、業界大手が自社の工程知識とデータを集めて業界向けのモデルを作り、シーンを公開して横展開を図る進め方は、中国の「AI+製造」政策が求める方向と一致しています。
使い方3と4:ダイカストの型式判別と不良対策
群馬合金(非鉄ダイカスト、125人)は、キーエンスのAI画像センサ「IV3」で型式を自動判別し、異品の取り違えをなくしました。自社製の生産実績モニタで手書きの日報も廃止しています(中小機構 省力化ナビ)。
型式判別は、形の似た製品が同じラインを流れるダイカストや加工の工場で、出荷ミスや後工程での混入を防ぐ使い方です。市販のAI画像センサは、数十枚の登録画像で判別を始められるものもあり、データサイエンティストのいない中小工場でも導入しやすい用途です。
ダイカストの鋳巣(内部の空洞)は、射出速度、金型温度、溶湯温度などの条件と、X線や外観の検査結果を結びつけて予測します。ショットごとの条件と検査結果を同じ番号で記録していることが前提です。詳しくは鋳造・ダイカストのAI活用で扱います。
| 比較 | 中铝(大手素材) | 群馬合金(中小ダイカスト) |
|---|---|---|
| 取り組みの単位 | 業界向け大模型、100超のシーン | 1工程の型式判別 |
| 主な目的 | 工程知識の集約と横展開 | 異品の取り違え防止 |
| データ | 業界データセット8つ | 製品画像、生産実績 |
| 始め方の示唆 | データとシーンの棚卸し | 市販センサで1工程から |
規模別の始め方
よくある質問
アルミと銅でAIの使い方は変わりますか
工程の考え方は共通ですが、材料の物性(融点、導電性、酸化のしやすさ)が違うため、エネルギーの使い方や不良の種類が異なります。モデルは材料・品種ごとに分けて作るのが基本です。
AI画像センサとAI外観検査システムはどう違いますか
AI画像センサは、カメラとAIが一体になった比較的安価な機器で、型式判別や有無の確認など用途が絞られています。AI外観検査システムは、撮像系とソフトを組み合わせて、微細な欠陥の検出まで対応します。目的に合わせて選んでください。
溶解炉のエネルギー削減にどれくらいの期間がかかりますか
炉ごとのエネルギーと生産実績の見える化は数か月で始められます。そこから運転の改善だけで効果が出る場合もあり、最適制御まで進むかは見える化の結果を見て判断します。
