10社の実証を同じ軸で並べる

公開情報で確認できる工場でのヒューマノイド実証を、作業内容、段階、数値の開示状況で一覧にしました。段階は発表内容から当編集部が分類したものです。

企業(拠点)ロボット作業内容段階開示されている数値
BMW(米スパータンバーグ)Figure 02→03板金部品の溶接治具への投入、03は物流シーケンシング02は11カ月稼働後に終了。03は2026年6月に展開開始稼働1,250時間超、部品9万個超、サイクル84秒(Figure発表)
BMW(独ライプツィヒ)Hexagon AEONヒューマノイド展開の拡大(詳細非公表)展開開始(2026年6月報道)なし
Mercedes-BenzApptronik Apollo組立キットの配送、部品検査パイロット(2024年3月契約)台数非公表
SchaefflerAgility Digit購入と出資。2030年までに100工場への展開目標契約締結(2024年11月)目標のみ
Schaeffler・PilatusHexagon AEONマシンテンディング、部品検査、リアリティキャプチャパイロット計画(2025年6月発表)なし
GXO LogisticsAgility Digit物流のトート搬送。RaaS(月額型)契約商用展開(2024年)Agility公式は実生産6.5万時間と表記
BYD・NIOUBTech Walker S1組立・品質管理工程で人と並行作業実証(2024〜2025年)なし
BYD・吉利・一汽VWほかUBTech Walker S2自動車工場の工程量産・出荷開始(2025年11月)Walkerシリーズ受注8億元超(同社発表)
宁德时代银河通用 Galbot S1電池工場の作業約100台が24時間稼働と報道2026年9月に2.36億元の受注
美的(荆州)自社「美罗」初品検査、TPM・EHS巡回社内運用(2026年7月報道)なし
TE Connectivity Japan(掛川)非公表非公表試験導入(2026年8月公開)なし

この表から分かるのは、数値まで開示しているのはBMW×Figureの1件にほぼ限られることです。他は契約、計画、展開開始の発表で、稼働率やサイクルタイム、投資回収の情報はありません。

作業の種類で見ると「運ぶ・置く・見る」に集中している

実証の作業内容を分類すると、部品の運搬・投入、マシンテンディング(機械へのワークの出し入れ)、検査・巡回の3つにほぼ集約されます。ねじ締めや嵌合のような精密な組立を、ヒューマノイドが量産タクトで担っている公開事例はほとんどありません。

ヒューマノイドの工場実証を運搬・投入、マシンテンディング、検査・巡回、精密組立の4分類に分け、事例数の多寡を示した図 運搬・投入BMW×FigureGXO×DigitMercedes×ApolloSchaeffler×Digit事例が多い マシンテンディングSchaeffler・Pilatus×AEON 検査・巡回美的 美罗Mercedes(部品検査) 精密組立公開事例はわずか
ヒューマノイド実証の作業分類。公開事例は「運ぶ・置く・見る」に集中している。

この偏りには理由があります。運搬や投入は、人の作業場所をそのまま使える点でヒューマノイドの利点(既存設備に合わせられる)が出やすく、失敗しても品質に直結しにくい作業です。逆に精密組立は、タクト・精度・保証の要求が厳しく、専用機や協働ロボットの方が有利な工程が多いのが現状です。工程別の比較はヒューマノイドか専用ロボットかで扱います。

開示されていない項目こそ判断材料になる

中国の事例では、受注額の中身にも注意が必要です。UBTechの受注には広西の具身データ収集センター向け1.26億元が含まれており(TechNode、2025年10月)、工場での作業用ではない案件が含まれます。银河通用では、宁德时代・美团・北汽・上汽が投資家と顧客を兼ねており、受注額をそのまま実需と読むことには批判があります。

欧州は慎重、中国は量産先行

IFRは2025年8月のポジションペーパーで、欧州企業は短中期のヒューマノイドの製造業導入に慎重である一方、中国は量産目標を設定していると整理しています。実際、欧州の事例はパイロットと計画が中心で、中国では量産・出荷と自社工場での運用が先行しています。

出荷台数も中国勢が大半を占めます。Omdiaによると2025年の世界の人形ロボット出荷は約1.3万台で、上位は智元5,168台、宇树4,200台、UBTech1,000台です。ただし中国电子报の報告では首位が宇树、UBTechは約600台となっており、調査によって順位も台数も違います。

データ基盤の観点から付け加えると、どの実証でも、ヒューマノイドが扱う部品の情報(品番、数量、投入先)は生産管理やMESから来ています。BMWの板金投入も、どの部品をいつ治具に入れるかはライン側の生産指示で決まります。ヒューマノイドの評価では、ロボット単体の能力だけでなく、生産指示とのつなぎ込みをどう実装したかを確認する価値があります。

個別の事例はBMW×Figure、Agility Digit、UBTech Walker S2の各記事で詳しく扱います。

よくある質問

ヒューマノイドが量産ラインに常駐している例はありますか

公開情報で台数・稼働率まで確認できる量産ライン常駐の例はほとんどありません。BMWでのFigure 02は11カ月の稼働で役目を終え、Figure 03への置き換えが2026年6月に始まったと報じられています。

日本の工場での実証はありますか

TE Connectivity Japanの掛川工場が試験導入を2026年8月に公開しています。作業内容や台数の詳細は公表されていません。

RaaSとは何ですか

Robots as a Serviceの略で、ロボットを購入せず月額などの利用料で使う契約形態です。GXOとAgilityの契約がヒューマノイドで初の正式なRaaS型の商用展開とされています。

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この特集について

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。