メータ読み取りのAI化は「点検の省人化」と「データ化」の2つの効果がある

工場には、圧力計・温度計・流量計・レベル計など、電気信号を出さないアナログメータが多数あります。これらの値は、保全担当者が巡回して目で読み、点検表に記入するのが一般的です。古い設備や、後から追加した配管・ユーティリティ設備では特に多く見られます。

メータ読み取りのAI化は、メータの前に小型のカメラを設置し、定期的に撮影した画像からAIで針の位置や数字を読み取って、数値データとして送る仕組みです。効果は2つあります。

1つ目は、巡回と記録の手間を減らす省人化です。広い工場では、巡回だけで1日に数時間かかることもあります。

2つ目は、点検記録が自動で数値データになることです。手書きの点検表は、過去の値を後から集計するのが難しく、傾向を見るには転記が必要でした。カメラで自動的に読み取れば、1日1回だった記録が1時間ごとや10分ごとになり、値の変化の傾向を追えるようになります。これは予知保全の前段の「データ化」にあたります。

LiLzの事例とダイキンの出資に見る用途の広がり

国内の代表的なサービスの一つが、沖縄のLiLzが提供するLiLz Gaugeです。無線のIoTカメラとAIを組み合わせ、アナログメータを遠隔で自動的に読み取るサービスで、画像の変化を数値化して異常検知を自動化するLiLz Guardも提供しています。2026年のLiLz Conferenceには、ENEOS、ダイキン工業、JR東日本、経済産業省など12団体が登壇しています。

ダイキン工業は2026年8月26日、LiLzへの出資を発表し、設備点検から空調・熱源設備の運用改善、省エネ提案までの工場向けソリューションを共同で開発するとしています。メータの読み取りで集めたデータを、点検の省人化にとどめず、設備の運用改善や省エネに使う方向性が示されています。

この動きは、メータ読み取りのデータが「点検記録」から「設備運用のデータ」に役割を広げつつあることを示しています。導入時から、読み取ったデータを何に使うかを決めておくと、投資の効果を複数の目的で説明できます。

導入時に決める設計項目

設計項目決め方の目安
対象メータの選定巡回で読んでいるメータを一覧にし、読み取りの頻度、設備の重要度、巡回の手間(遠い・高所・危険区域)で優先順位を付ける
撮影の頻度点検表の記録頻度より細かく。変化の速い値は10分〜1時間ごと、緩やかな値は数時間ごと。無線カメラは頻度と電池寿命のトレードオフ
カメラの設置メータの正面に近い角度、反射や逆光を避ける位置、振動の少ない取付面。夜間や暗所では照明の要否を確認
通信無線(LTE、LPWAなど)か有線か。工場の建屋内の電波状況を事前に確認
読み取り結果の確認読み取りの信頼度が低い画像を人が確認する仕組み。画像と数値の両方を残す
データの送り先点検記録として保全システムへ、傾向監視として時系列データベースへ、設備IDで紐付ける

カメラの設置で見落としやすいのが、メータの文字盤の汚れや結露、ガラス面の反射です。屋外や湿度の高い場所では、文字盤が曇って読み取れなくなることがあります。設置前に、季節や時間帯による見え方の変化を確認しておくと安心です。

予知保全につなげるデータの使い方

点検の自動記録、閾値監視、傾向分析、予知保全と省エネへの段階的な発展 1 自動記録巡回・転記の削減点検表のデジタル化 2 閾値監視上下限の逸脱を即時に通知 3 傾向分析フィルタ差圧の上昇などの変化を追う 4 予知保全・省エネ他のデータと組み合わせ保全計画・運用改善 2以降に進むには、読み取り値を設備IDと時刻で時系列データベースに残すことが前提
メータ読み取りから予知保全・省エネへの発展。最初の目的は点検の省人化、データが溜まると次の用途が開ける。

読み取ったデータは、段階的に使い方を広げられます。

閾値監視では、圧力や温度が上下限を外れたときに即時に通知します。人の巡回では1日1回しか気づけなかった異常に、数十分以内に気づけるようになります。

傾向分析では、値の変化の傾向を追います。たとえばフィルタの前後の差圧は、目詰まりとともに徐々に上がるため、傾向から交換時期を見込めます。ポンプの吐出圧力の緩やかな低下は、インペラの摩耗などの兆候である可能性があります。

予知保全や省エネへの発展では、メータの値を振動や電流などの他のデータ、MESの稼働実績と組み合わせます。そのためには、読み取り値をメータの番号ではなく、設備IDと計測点のIDで管理しておくことが前提になります。設備IDの体系が保全システムやMESと揃っていないと、後で他のデータと組み合わせられません。予知保全全体の段階は予知保全AIとは、古い設備からのデータの取り方は古い設備でもAIは使えるかで整理しています。

メータを交換するか、カメラで読むか

アナログメータを電気信号を出すデジタルのセンサに交換すれば、AIによる読み取りは不要になります。カメラで読む方法が向いているのは、交換に配管工事や設備の停止が必要な場合、メータの数が多く交換費用がかさむ場合、設備のメーカー保証や認証の関係で計器を変更しにくい場合です。

逆に、新設の設備や、配管の更新に合わせて計器を交換できる場合は、デジタルのセンサに置き換える方が、読み取りの誤差や電池の管理が不要になり、長期的には有利なことが多くなります。対象ごとに、交換とカメラ読み取りの費用と手間を比べて選んでください。

よくある質問

デジタル表示のメータも読み取れますか?

読み取れます。7セグメント表示などのデジタル表示は、アナログの針よりも読み取りやすいことが多いです。ただし、表示の点滅や、表示の切り替え(複数の値を交互に表示する計器)がある場合は、撮影のタイミングに注意が必要です。

危険区域(防爆エリア)にカメラを設置できますか?

防爆認証を取得したカメラが必要です。対応する製品は限られるため、事前にサービス提供者に確認してください。エリアの外から望遠で撮影できる配置にできれば、防爆対応のカメラを使わずに済む場合もあります。

点検の記録として監査に使えますか?

撮影した画像と読み取った値、撮影時刻を保存し、読み取りの誤りを確認・修正した記録を残せば、点検記録として使える可能性があります。業界の規制や社内規定で求められる要件を、品質保証部門と事前に確認してください。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。