異物の「場所」と「材質」で方式が決まる

異物検査で最初に整理すべきは、見つけたい異物が製品の表面にあるのか内部にあるのか、そして何でできているのかです。表面に見えている異物は可視光のカメラで撮像できますが、製品の内部に埋まった異物はカメラには写りません。内部の異物には、物質を透過するX線や、金属に反応する金属検出機が使われます。

AIが効くのは、主に画像(可視光・近赤外・X線画像)から判定する部分です。従来の画像処理では、異物の色や形をルールで定義する必要がありましたが、異物の種類が多く形も一定しない対象では、ルールを書き切れません。AIを使うと、正常な製品・原料の見た目を学習し、それと違うものを異物候補として拾えます。

4つの検出方式

方式捉えるもの向く異物向かない異物AIの役割
可視光カメラ表面の色・形表面の毛髪、虫、焦げ、異色の原料片内部の異物、同色の異物正常な見た目との違いを検出
近赤外・ハイパースペクトル材質による光の吸収の違い色が似ていても材質が違うもの(樹脂片、植物の茎など)内部の異物分光データから材質の違いを判定
X線密度の違い金属、ガラス、石、硬い骨密度が製品と近い樹脂・毛髪・虫X線画像で製品の重なりと異物を見分ける
金属検出機金属による磁界の変化鉄・非鉄金属・ステンレス非金属主に閾値判定。AIの出番は少ない

方式はどれか1つで足りることは少なく、リスクの高い異物ごとに方式を割り当てて組み合わせます。HACCP(危害要因分析にもとづく衛生管理)の危害要因分析で挙げた異物を、どの工程のどの方式で除去・検出するかを対応表にしておくと、抜けが見えます。

異物の場所と材質による検出方式の判定フロー 異物はどこにあるか 表面に見える 内部に埋まっている 色が違う→ 可視光+AI 色が同じで材質が違う→ 近赤外+AI 密度が高い→ X線+AI 金属→ 金属検出機
異物の場所と材質による方式の割り当て。表面か内部か、密度が製品と違うかで方式が分かれる。

異物検査に良品学習が向く理由

異物は種類が無数にあり、次に何が混入するかを事前に知ることはできません。不良(異物)の画像を集めて学習する方式では、学習していない異物を見逃すおそれがあります。そのため異物検査では、正常な製品・原料だけを学習し、それと違うものを異物候補とする良品学習の考え方が向いています。

食品での代表例がキユーピーです。同社のAI原料検査装置は、不良品のパターンではなく良品のパターンを学習し、良品以外を不良とする方式で精度を大きく上げたと報じられています(MONOist、2020年4月)。2016年に開発を始め、2018年8月に鳥栖工場のベビーフード原料のラインで稼働しました。扱う原料は3,000種類以上で、目標価格は従来の検査装置の10分の1とされています。統合報告書の時点では、グループの国内4工場で稼働しています(キユーピーレポート2020)。

キユーピーのAI原料検査が扱う原料
3,000種類以上
MONOist(2020年4月)の報道
鳥栖工場の実ラインで稼働開始
2018年8月
同上・キユーピーレポート2020
統合報告書時点の稼働拠点数
国内4工場
キユーピーレポート2020

一方で、良品学習は良品の見た目のばらつきを異常と判定しやすい方式でもあります。農産物の原料のように形や色が自然にばらつく対象では、ばらつきを十分に含む良品データを集めること、異物候補を最終的に人が確認する工程を残すことが、過検出を抑える鍵になります。

方式の選び方と運用

方式を選ぶ順番は、まず危害要因分析で「見逃すと重大な異物」を挙げ、それぞれの場所・材質・大きさを書き出すことです。次に、各異物を検出できる方式を上の表から選び、検出限界(どの大きさまで見つけられるか)をサンプルで確かめます。X線や近赤外は、製品の厚さや重なり、水分量で検出限界が変わるため、実際の製品で試験してください。

運用では、検出感度の定期確認が欠かせません。テストピース(大きさと材質が既知の異物見本)を一定間隔で流し、確実に検出されることを確認して記録します。AIを使った方式でも、この確認の考え方は変わりません。

検出記録をロットに紐付けて回収範囲を絞る

異物を検出したときの記録は、HACCPの記録としても、万一の回収時にも重要です。検出時刻、検出した装置と方式、異物の画像、製品のロット、排出の確認、感度確認の記録を、生産実績と同じキーで残してください。

特に、どの時間帯のどのロットにどの原料ロットが使われたかが追えると、異物が見つかったときに影響範囲を絞り込めます。逆に、検出記録が装置の中にしか残っていないと、回収の範囲を広く取らざるを得ません。食品工場の記録のデジタル化は食品のHACCP記録とAI、判定結果をMESに戻す設計は外観検査AIの判定結果をMESに戻すで扱っています。

よくある質問

X線検査機にAIを組み合わせる利点は何ですか?

X線画像では、製品が重なった部分や形が複雑な部分が濃く写り、従来の閾値判定では異物と区別しにくいことがあります。正常な製品のX線画像を学習させると、製品の重なりのパターンと異物を見分けやすくなる場合があります。効果は製品の形状と異物の種類によるため、実際の製品で検証が必要です。

毛髪や虫はどの方式で見つけられますか?

製品の表面にあれば可視光カメラとAIで検出できる可能性があります。内部に入ったものは、密度が製品と近いためX線でも見つけにくく、混入させない工程管理(防虫、着衣管理)が主な対策になります。

医薬品や樹脂の異物検査でも考え方は同じですか?

場所と材質で方式を選ぶ考え方は同じです。医薬品では、検査装置とソフトのバリデーション(意図どおりに動くことの検証と記録)が求められる点が食品と異なります。樹脂では、異色の樹脂片や黒点を可視光で検出する用途が多くなります。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。