新製品と品番切替は分けて考える
「履歴がない品目」には性質の違う2種類があります。
- 品番切替:設計変更・仕様変更・原価改善で品番が変わったが、顧客から見れば同じ用途の後継品。需要の大半は旧品番から引き継がれる
- 真の新製品:新しい用途・新しい顧客向けで、引き継ぐ需要がない
品番切替は、予測の問題というよりデータの問題です。旧品番と新品番の対応が分かれば、旧品番の履歴を新品番につなぐだけで通常の予測が使えます。製造業の「履歴のない品目」の多くは実はこちらで、ここを正しく処理するだけで予測できない品目は大幅に減ります。
品番切替の系列接続ルール
| 切替パターン | 接続ルール | 注意点 |
|---|---|---|
| 1対1(単純な後継) | 旧品番の履歴をそのまま新品番に連結 | 切替日前後の重複出荷を二重計上しない |
| 多対1(統合) | 旧品番の履歴を合算して連結 | 旧品番間で単位や入数が違う場合は換算 |
| 1対多(分割) | 旧品番の履歴を想定比率で按分 | 比率は営業見込みか初期実績で更新 |
| 並行販売期間あり | 切替期間は旧+新の合計を需要として扱う | 旧品番の在庫消化と需要を区別 |
この対応表は、設計変更の情報を持つPLMや、ERPの品番マスタから作ります。実際には、設計変更通知に「後継品番」の欄があっても入力されていないことが多く、生産管理や営業の担当者に聞いて埋める作業になります。マスタ整備の進め方はAIの前にマスタ整備、需要予測のデータ全般は需要予測に必要なデータを参照してください。
系列接続のルールを決めたら、予測モデルに入れる前に、接続した系列をグラフで目視確認することを勧めます。切替日の前後で需要が不自然に倍増・半減していれば、重複計上や按分比率の誤りが疑われます。数百品目でも、切替があった品目だけに絞れば確認の手間は限られます。
接続した系列で学習したモデルは、品番切替のたびに予測が途切れることがなくなり、計画担当者が切替品目だけ手で予測を作る作業も減ります。
真の新製品を予測する3つの手法
- 類似品マッピング:営業や企画の担当者が、新製品に似た既存品を1〜3品目指定し、その立上げ期の実績を基に予測します。最も簡単で説明しやすい方法ですが、指定する人の判断に依存します。指定の根拠(用途・顧客・価格帯が近い)を記録しておくと、後で予測が外れた理由を検証できます。
- 属性ベース回帰:品番の属性(製品群、価格帯、顧客、用途、仕様)から需要の水準を推定するモデルを、過去の新製品の実績で学習します。多数の品目を1つのモデルで学ぶクロスラーニングの考え方を新製品に応用したものです。過去に十分な数の新製品投入がある会社で有効です。
- 立上げカーブ:過去の新製品が発売後どのような形で需要が立ち上がったか(急立上げ型、緩やか型など)を類型化し、新製品の総需要見込みにその形状を当てはめます。総量は営業見込みで、時間的な形状はデータで決める分担です。
3つの手法は排他的ではありません。類似品マッピングで水準の当たりを付け、立上げカーブで時間的な形を与え、属性ベース回帰の結果と比べて大きく外れていないかを確かめる、という組み合わせも実務ではよく使われます。複数の手法の結果が大きく食い違う品目は、不確実性が高い品目として、部材の先行手配を慎重にする判断材料になります。
手法の選び方と運用
| 条件 | 向く手法 |
|---|---|
| 過去の新製品投入が少ない(年に数件) | 類似品マッピング |
| 毎年多数の新製品を出し、属性が整っている | 属性ベース回帰 |
| 総量の見込みは営業が持っている | 立上げカーブ |
| 受注生産で顧客の内示がある | 内示を主に、上記は補助 |
新製品の予測では、点予測より不確実性の扱いが重要になります。履歴のある品目より予測の幅は大きく、立上げ期に過大な在庫を持つか、欠品で顧客の立上げを止めるかのリスクがあります。実務では、立上げ初期は部材だけを予測の上側に合わせて確保し、完成品の生産は受注や初期実績を見て段階的に増やす、という分担がよく取られます。部材の調達リードタイムが長い場合は、予測の幅を前提に、どの部材をどこまで先行手配するかを決めておくことが、予測精度そのものより効果的です。
どの手法も、発売後の実績が数期間分たまったら、通常の予測手法に切り替えます。切替のタイミング(たとえば実績3か月分)をルールとして決めておかないと、新製品向けの暫定予測がいつまでも残ります。
よくある質問
設計部門はこの作業にどう関わりますか?
設計変更の際に後継品番と変更の種類を記録してもらうことが最も重要です。PLMの設計変更フローに後継品番の入力を必須にできると、系列接続の手作業がなくなります。
類似品の選び方に基準はありますか?
用途、顧客、価格帯、販売チャネルが近い品目を選びます。複数の担当者が独立に選んで一致するかを確かめると、選定の偏りを減らせます。
