国内の「製造業の生成AI利用率」は24.6%から65.6%まで開く

国内で公表されている製造業の生成AI利用率を並べると、最も低い数字と最も高い数字で2.7倍の差があります。

調査時期・対象数字何を数えたか
MONOist読者調査2025年2月、有効回答402件65.6%業務で「日常的に」18.6%+「時々」47.0%
アルサーガパートナーズ2025年7月、製造業311名51.0%積極16.3%+一部29.3%+試験5.4%
令和8年版 労働経済白書(厚労省)2026年9月公表33.3%製造業の個人の生成AI利用率
アルダグラム2025年6月、5業界各500人24.6%製造業の生成AI業務活用率(5業界中で最高)
2025年版ものづくり白書(JILPT調査)2025年5月12.2%製造工程にAIを導入済みの企業(大企業は31.3%)

最後の12.2%は「製造工程へのAI導入」で、生成AIに限らず、従業員個人の利用でもありません。同じ「AI導入率」の見出しで引用されることがありますが、別の指標です。

数字が食い違う3つの理由

食い違いの理由は、母集団・設問・時期の3つです。

  1. 母集団:MONOistの調査はITやものづくりの技術情報を読むメルマガ読者が回答者で、生成AIに関心が高い層に偏ります。労働経済白書やアルダグラムは一般の就業者を対象にしています。
  2. 設問:「使ったことがある」「業務で時々使う」「業務で定常的に使う」「会社として活用方針がある」は、それぞれ別の数字になります。アルサーガの51.0%には「試験的に使っている」5.4%が含まれます。
  3. 時期:生成AIの利用率は1年で大きく動きます。総務省の情報通信白書では、生成AIの活用方針(積極活用+限定利用)を定めた日本企業は2024年度の49.7%から2025年度の68.9%に伸びました。半年違う調査を並べると、その差だけで十数ポイント変わります。

調査の作り手側にも誤差があります。アルサーガパートナーズのリリースは、冒頭で有効回答331名、別の箇所で311名としており表記が一致していません。二次報道を引用する場合は、原典の設問文を確認するのが確実です。

利用経験、業務での時々の利用、定常利用、全社展開の順に範囲が狭くなる入れ子の図 利用経験がある(個人) 業務で時々使う(MONOist読者65.6%の大半) 業務で定常的に使う(MONOist「日常的に」18.6%) 業務プロセスに組み込み済み 全社展開・効果測定あり(矢野経済研究所:全社活用11.3%)
同じ「生成AI利用率」でも、数えている範囲が違う。外側ほど数字が大きくなる。

海外調査は「パイロット」と「定常利用」を分けて読む

海外の調査は、日本の調査より高い数字が並びますが、多くは「パイロットを始めた」割合です。

生成AIパイロットを1件以上開始した製造業
87%
Deloitte「2025 Future of Manufacturing」
エージェント型AIを現在利用する製造業
6%
Manufacturing Leadership Council(2025年初、Deloitte引用)
AIでEBITへの効果を報告した企業(全産業)
37%
McKinsey「The state of AI in 2026」(2026年8月、1,719人)

Deloitteの87%はパイロットの開始で、定常利用ではありません。McKinseyの2026年調査では、AIが全社でスケールしていると答えた割合は44%(前年38%)に上がった一方、EBITへの効果を報告したのは37%で横ばいでした。Rockwell Automationの第10回「State of Smart Manufacturing」(2025年6月、17カ国1,560人)では、95%がAI/MLに投資済みか今後5年で投資予定と答えています。「今後5年で予定」を含む数字であることに注意が必要です。

国際比較では、総務省の資料で企業の業務での生成AI利用率(2024年)が米国90.6%、中国95.8%、ドイツ90.3%、日本55.2%とされています。ただし同じ白書は、2024年度の推計方法が前年度と違うため単純比較はできないと注記しています。

自社の位置を測るなら「利用率」より3つの指標

他社の利用率と比べるより、自社の状況を次の3つで測るほうが判断に使えます。

アルサーガの調査では、生成AIを使わない理由の1位が「具体的な活用方法がわからない」(46.7pt)、2位が「既存システムとの連携が難しい」(25.7pt)でした。利用率が伸びない原因は、ツールの有無より、業務と既存システム(MESや文書管理)への組み込み方にあることを示しています。用途の選び方は製造業の生成AI活用の全体像、生成AIに限らないAI全般の導入率は製造業のAI導入率はどこまで進んだか、海外のエージェント利用率は製造業のエージェント型AI利用は6%で詳しく扱っています。

よくある質問

製造業の生成AI利用率として、1つだけ引用するならどれがよいですか?

公的統計で一般就業者を対象にした、令和8年版労働経済白書の製造業33.3%(個人の利用率)が偏りの少ない数字です。ただし企業単位の導入率ではないため、その旨を添えて引用してください。

日本は海外より遅れているのですか?

企業の業務利用率や活用方針の策定率では、米国・中国・ドイツより低い水準です。一方、McKinseyの調査ではEBITへの効果を報告する企業は37%にとどまり、海外でも利用率の高さがそのまま成果になっているわけではありません。

情報通信白書に製造業の数字は載っていますか?

令和7年版・8年版の本文には、業種別(製造業)の生成AI利用率は載っていません。製造業の数字が必要な場合は、図表データか別の調査を当たる必要があります。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。