Industrial Copilotは製品ごとに分かれた生成AI群

Siemens Industrial Copilotは、Siemensの設計・エンジニアリング・運用・保全の各ソフトウェアに組み込まれた生成AIアシスタントの総称です。Siemensが2025年5月に示した状況では、次の系統がありました。

系統組み込み先主な機能提供状況(2025年5月時点)
Design CopilotNX(CAD)設計作業の支援提供中
Engineering CopilotTIA Portal(PLCエンジニアリング)自然言語からのPLCコード(SCL)生成など提供中
Operations CopilotInsights Hub(産業IoT)分散した稼働データからの洞察提供中
Services(Maintenance Copilot)Senseye(予知保全)保全支援提供中(2025年3月にEntry/Scaleの2パッケージで拡充)
Planning Copilot計画系計画業務の支援プレリリース

加えて、2025年1月のCES 2025では、機械の近くで動かして現場オペレーターや保全担当のリアルタイム判断を支援する「Industrial Copilot for Operations」が発表され、Industrial Edgeとの統合が示されました。機械レベルのOperations Copilotは2025年末の予定とされていました。さらに2026年1月のCES 2026では、Teamcenter・Polarion・Opcenterを対象とする9種類のIndustrial Copilotを、Siemens Xcelerator Marketplaceで全規模の企業向けに提供すると発表しています。

設計・エンジニアリング・運用・保全の4系統のCopilotとオーケストレーターの関係図 DesignNX EngineeringTIA Portal(SCL生成) OperationsInsights Hub・Edge ServicesSenseye 保全 オーケストレーター+専門AIエージェント(2025年5月構想) Xcelerator Marketplace(サードパーティ製エージェントを含む構想)
Siemens Industrial Copilotの系統と、背後に置かれるAIエージェントの関係。

エージェント化の構想:オーケストレーターと専門エージェント

Siemensは2025年5月12〜13日のAutomate 2025で、Q&A型のCopilotを超えて多段の工程を実行するAIエージェントを、Industrial Copilotの背後に導入する構想を発表しました。オーケストレーターが専門エージェント群を配備・統括し、ユーザーはどのタスクを委ねるかを選ぶ設計とされています。サードパーティ製を含む産業AIエージェントのマーケットプレイスをSiemens Xcelerator上に設ける計画も示されました。設計の考え方は製造業AIエージェントの設計で詳しく扱っています。

公表されている事例と効果数値

公表情報から確認できる利用例と数字は次のとおりです。いずれもSiemens発表に基づくもので、第三者の検証値ではありません。

Senseye Maintenance Copilotのパイロットでの事後保全時間の平均削減
25%
Siemens発表(2025年3月、パイロット顧客は非公表)
Engineering CopilotによるSCLコード生成の高速化
約60%
Siemens推定(2025年3月)
「オートメーション自体の自動化」による顧客生産性向上
最大50%
Siemens構想(2025年5月、実測ではない将来見通し)

利用例としては、thyssenkrupp Automation Engineeringが全世界で展開中でコード品質と開発速度の向上を報告し(定量値は非公表)、Schaefflerは2024年に現場のエンジニアリングと運用の業務自動化に使ったとされます。Siemens自社では、Erlangenの電子工場が24時間の現場トラブルシュートと保全にCopilotのチャットボットを使い、Bad Neustadt工場がInsights Hub Production Copilotで分散データの洞察化に使っています(いずれも定量値なし)。

Engineering Copilot(PLCコード生成)を使うときの注意

製造業で関心が高いのは、TIA Portalで自然言語からSCL(IEC 61131-3の構造化テキスト言語)を生成する機能です。生成の速さは魅力ですが、生成されたコードは人が書いたコードと同じレビュー・試験を通す必要があります。研究でも、汎用LLMがそのままでは有効なPLCプログラムを生成できず、コンパイラや形式検証を組み込んだ反復で成功率が上がることが報告されています(LLM4PLC、2024年)。安全PLCのプログラムは生成の対象外にする運用を勧めます。詳しくはPLC開発Copilot比較で扱っています。

導入を検討するときの確認点

Industrial Copilotは、それぞれのSiemens製品の機能として提供されるため、導入の前提は「その製品を使っていること」です。TIA PortalでPLCを開発している工場ならEngineering Copilot、Senseyeで予知保全をしている工場ならMaintenance Copilotというように、既存の利用製品から検討を始めるのが自然です。

データの観点では、Operations Copilotが答えられる範囲は、Insights HubやIndustrial Edgeに集まっている稼働データの範囲に限られます。MESの作業指示・ロット・品質判定と結びつかない稼働データだけでは、「なぜ不良が増えたか」のような質問に答えるのは難しくなります。MESのデータをどう連携するかは、導入前に確認すべき点です。

全体戦略の位置づけは、海外動向としてSiemens Industrial Copilotの全体像でも扱っています。

よくある質問

Siemens製品を使っていなくても使えますか

Industrial Copilotは各Siemens製品に組み込まれた機能のため、基本的には対象製品の利用が前提です。CES 2026で発表されたXcelerator Marketplace経由の提供については、対象製品と条件を個別に確認してください。

Senseye Maintenance Copilotの25%削減は自社でも期待できますか

パイロット顧客の結果で、対象設備や期間は公表されていません。自社の保全記録の質や設備の種類で結果は変わるため、自社データでの試用で確認する必要があります。

Microsoftの製品とはどう関係しますか

SiemensとMicrosoftはIndustrial Copilotを共同開発しています。Siemens製品の中で動くCopilotと、Microsoftが提供するFactory Operations Agentなどは別の製品です。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。