2つの政策と数値目標
工信部は2025年12月29日付で「工业互联网和人工智能融合赋能行动方案」(工業インターネットと人工知能の融合による賦能の行動方案)を通知しました。続いて2026年1月には「推动工业互联网平台高质量发展行动方案(2026—2028年)」(工業インターネット平台の高品質な発展を推進する行動方案)が出ています。2028年までの主な目標は次のとおりです。
融合賦能行動方案は、あわせて20の重点業界で高品質データセットを構築するとしています。
工業インターネットとは、中国で使われる「工业互联网」の訳で、工場の設備・システム・企業をネットワークでつなぎ、データを集めて活用する基盤の総称です。日本のIIoT(産業用IoT)とデータ基盤を合わせた概念に近く、「平台」はその上で動くプラットフォーム(クラウドサービス)を指します。
規模の参考として、工信部のデータでは2025年の工業インターネットの核心産業は1.6兆元を超え、付加価値約2.5兆元を牽引する見込みです。天眼查によると、2025年に新規登記された工業インターネット関連企業は15.56万社で、前年比27.8%増でした。
判別式AIと生成式AIの使い分けを政策が明記
2つの方案のうち、平台の高品質発展の行動方案には、AIの種類の使い分けが具体的に書かれています。ルールが明確な生産制御やリスク識別には判別式AIを、工程の最適化や設計には生成式AIを使うという整理です。
政策文書がAIの種類ごとの適用領域をここまで具体的に書くのは珍しいことです。生成AIをあらゆる工程に入れるのではなく、制御とリスク識別のように誤りの許されない領域は判別式AIに任せる、という考え方が政策として示されています。2026年1月の「AI+製造」専項行動が工業向け小モデルを明記したこととも整合しています(中国政策が工業小モデルを明記した理由)。
平台の育成と課金モデル
平台の行動方案は、平台を「基础级・成长级・引领级・生态级」の4段階で育成するとしています。智能工厂の梯度培育(基础级・先进级・卓越级・领航级)と同じ、段階的な認定で引き上げる方式です。
同じ方案は、サービスのモデルとして「先用后付」(先に使って後で払う)、「订阅服务」(サブスクリプション)、「效果付费」(成果報酬)を支持し、木兰许可协议(中国のオープンソースライセンス)による平台のオープンソース化も支持しています。課金モデルの論点は中国が政策で後押しする「效果付费」で詳しく扱っています。
エージェントは6層で展開
中国工业互联网研究院は、工業エージェントを設備・ライン・工場・企業・生態といった6つの層で展開することを提案しています。設備単体のエージェントから、サプライチェーン全体(生態)のエージェントまで、階層ごとに役割を分ける考え方です。これは、ISA-95の階層(設備・ライン・工場・企業)に沿ってAIの置き場所を決める考え方と近いものです(ISA-95とAI)。
データ基盤の視点からの読み方
日系工場にとってこの政策が意味を持つのは、主に次の2点です。
- 中国の平台事業者からの提案が増える:政策の目標達成のため、平台事業者は中小企業を含む工場の接続を急いでいます。日系工場や日系のサプライヤーにも、平台への接続やAIサービスの提案が来ると考えられます
- 安全の分類分級と重要データの備案:平台の行動方案は、工業インターネットの安全の分類分級管理と、重要データの識別・備案を求めています。中国の平台に工場データを載せる場合、そのデータが重要データに当たるかの判断が必要になります
よくある質問
日系の工場も「5万社」の改造の対象ですか?
方案は対象を国内企業に限定する記述を確認できていませんが、改造の支援を受ける手続きは地方の実施細則で決まります。日系工場が対象になるかは、所在地の工業・情報化部門の制度を確認する必要があります。
工業インターネット平台とMESは何が違いますか?
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