Figureが公開した数字

Figure AIは2025年11月19日、BMWグループのスパータンバーグ工場(米サウスカロライナ州)でのFigure 02の稼働を総括する発表を出しました。作業内容は、車体組立工程で板金部品を溶接治具に投入することです。

溶接治具に投入した板金部品
9万個超
Figure発表(2025年11月19日)
稼働時間
1,250時間超
Figure発表(2025年11月19日)
サイクルタイム(うち投入37秒)
84秒
Interesting Engineering報道(2025年11月20日)

発表と報道で示された数字は次のとおりです。

項目公表値
稼働期間11か月(Figure発表)
投入した部品数9万個超
寄与した生産台数BMW X3で3万台超
稼働時間1,250時間超
配置精度99%超(シフトあたり)
公差5mm
サイクルタイム84秒(うち投入37秒)
主な故障箇所前腕(3自由度・熱管理・配線が集中)

故障箇所まで公表したのは珍しい例です。Figureによれば、前腕に自由度・熱管理・配線が集中していたことが主な故障要因で、後継のFigure 03では手首の配電基板と可動ケーブルを廃止したとしています。

数字から計算できること

公表値から、いくつかの量を計算できます(以下は当サイトの計算で、Figureの発表値ではありません)。

  • 1,250時間を11か月で割ると、月あたり約114時間です。1日2交替・月20日稼働の工場(月約320時間)と比べると、3分の1程度の稼働時間です
  • 9万個を1,250時間で割ると、1時間あたり約72個、1個あたり約50秒です。公表されたサイクルタイム84秒と合わないため、複数台の合計、または1サイクルで複数部品を扱っている可能性があります。発表からはどちらか判断できません
  • 3万台の生産に「寄与」したことと、3万台分の部品をすべて投入したことは同じではありません。9万個÷3万台=1台あたり3個で、その工程の部品の一部を担っていたと考えるのが自然です

公開されていないこと

Figure BMW稼働の公開値と非開示事項 公開された値 稼働期間 11か月 部品 9万個超・X3 3万台超 稼働 1,250時間超 配置精度 99%超 サイクル 84秒 故障箇所 前腕 公開されていない事項 稼働した台数(フリート規模) 稼働率・停止時間 単独作業か人との協働か 工程への寄与の割合 契約形態と経済性 人の介入の頻度
公開値と非開示事項。投資判断に必要な情報の多くは右側にある。

Runtime Wireの2026年7月の記事は、Figureの発表では「11か月」、BMWの引用では「10か月」とされている表記の揺れを指摘しています。また、「3万台のX3生産を支援」が単独作業なのか人との協働なのか、生産への寄与の割合が不明確だという批判も紹介しています。フリートの規模、稼働率、契約の経済性は非開示です。

この関係の性格自体にも以前から疑問が出ていました。2025年6月5日のBloomberg Techで、FigureのBrett Adcock CEOは、BMWとの関係がパイロットか商用かを明言せず、ライブデモも行いませんでした。WSJがBMWでの進捗に疑問を呈し、Figureは強く反発したと報じられています(TechCrunch、2025年6月6日)。

さかのぼると、BMWは2024年8月6日に、Figure 02の数週間の試験が成功したと発表しています。この時点では、工場への配置は決まっておらず、時期も未定とされていました。

その後:Figure 03とAEON

2026年6月、BMWはスパータンバーグ工場でFigure 03の展開を始めたと報じられています。作業は物流のシーケンシング(部品を組立順に並べる作業)で、Figure 02の溶接治具への投入とは別の工程です。性能データは公表されていません。

同じ時期、BMWはライプツィヒ工場では、FigureではなくHexagon RoboticsのAEONでヒューマノイドの展開を広げています。BMWはこれらをiFACTORY戦略の「フィジカルAI」統合と位置付けています。一つの自動車メーカーが、工場ごとに別のヒューマノイドを試していることになります。

また、Figureの公式サイトは現在、Figure 03を家庭向けの汎用ヒューマノイドとして打ち出しています。工場での実績を持つ企業が、事業の重心を家庭に移している点は、工場向けの製品供給と保守を考えるうえで注意が必要です。

自社で評価するなら何を見るか

ヒューマノイドの実証を検討する企業が、ベンダーに求めるべき情報は、Figureの発表で欠けている項目そのものです。稼働台数と稼働率、人の介入頻度、サイクルタイムの人との比較、安全の確保方法、故障時の復旧時間と保守体制、1台あたりの費用と契約形態を、実証の条件として最初に合意します。

データの面では、ロボットの稼働ログを、MESの作業実績やロット情報と同じ時刻軸で記録しておくことが重要です。そうしないと、ロボットが担当した部品と品質の関係を後から追えません。検証の観点はBMW×Figureの11カ月を検証、工場の実証一覧はヒューマノイドの工場実証一覧でも扱っています。

よくある質問

Figure 02は今もBMWで稼働していますか

Figureは2025年11月の発表でFigure 02の稼働を総括しており、2026年6月にはFigure 03の展開開始が報じられています。Figure 02が現在も稼働しているかは、公表資料からは確認できません。

サイクルタイム84秒は人と比べて速いですか遅いですか

発表では人の作業者のサイクルタイムとの比較は示されていません。同じ作業の人のサイクルタイムが分からないため、速いか遅いかは判断できません。

なぜ表記が「11か月」と「10か月」で揺れるのですか

Figureの発表は11か月、BMWの引用では10か月とされています。稼働開始の起点の取り方の違いなどが考えられますが、どちらが正しいかを確認できる一次情報はありません。

この記事に出てくる用語

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。