柱1:GuardianAI、ドライブの電気信号で設備異常を検知

Rockwell Automation(米国)は2024年3月12日、「FactoryTalk Analytics GuardianAI」を発表しました。VFD(可変周波数ドライブ、モーターの回転数を制御するインバーター)の電気信号から設備の異常を検知する予知保全の製品です。PowerFlex 755/755T/6000Tの各ドライブと連携します。

特徴は、振動センサーなどを追加せず、すでにモーターを動かしているドライブの電気信号を使う点です。ノーコードでエッジ上で動き、軸のミスアライメント、アンバランス、ソフトフット(据付面の不良)、緩み、軸受けの故障を早期に警告します。

日本では2024年7月10日に一般提供が始まりました。あわせて、LogixAI(提供中)、OptimAI・TwinAI・VisionAI(日本投入予定)のAIロードマップが示されています。

製品内容日本での状況(2024年7月時点)
GuardianAIVFDの電気信号による予知保全一般提供開始
LogixAILogixコントローラー上の異常検知提供中
OptimAI / TwinAI / VisionAI最適化・デジタルツイン・画像のAI投入予定

柱2:エッジで動く小型言語モデル(SLM)

2025年11月のAutomation Fair 2025(シカゴ、来場者1.5万人超)で、RockwellはNVIDIAのNemotron-Nano-9B-v2をベースにした小型言語モデル(SLM)を産業エッジに載せる取り組みを紹介しました。

SLMは、数十億パラメータ程度の比較的小さな言語モデルで、GPUサーバーではなくエッジの機器でも動かせます。クラウドの大型LLMを呼ぶ構成と比べると、次の利点があります。

  1. 遅延:ネットワークを往復しないため、現場の操作画面で応答が速い
  2. データの持ち出し:設備データや操作ログを工場の外に出さずに済む
  3. 推論コスト:トークン従量課金がかからない

Rockwellは以前から、FactoryTalk Optix Food & Beverageモデル(MicrosoftのPhi-3ベースのSLM)で、包装機のオペレーターにエッジでAIガイダンスを提供しています。また、FactoryTalk OptixにCopilotを搭載し、エッジAI向けのMLOps機能を追加、PlantPAx DCSとFactoryTalk Data MosaixにもAIを組み込んでいます。エッジSLMの判断条件は工場のエッジで動く小型言語モデルで詳しく扱っています。

ドライブとPLCの層、エッジの層、自社工場の層にRockwellのAI製品を配置した図 ドライブ・PLCGuardianAI(VFD信号)・LogixAIPowerFlex / Logix エッジ・HMINemotron-Nano-9BベースSLM・Optix(Phi-3)FactoryTalk Optix・MLOps 設計・運用Design Studio Copilot・Energy Manager自社工場ROK on ROKで実証
RockwellのAIは、制御機器とエッジに組み込む方向に重心がある。

柱3:自社工場での実証と20億ドル投資

Rockwellは自社工場「ROK on ROK」で、AIによるスケジューリングと制御で動く完全自律のコンタクタ(電磁接触器)生産ラインを公開しました。また、5年間で20億ドルを工場・デジタル基盤・人材に投資し、米ウィスコンシン州南東部に100万平方フィート超のグリーンフィールド(新設)工場を計画しています。

Automation Fair 2025では、FactoryTalk Energy Managerによる自社工場のAIエネルギー監視で、投資回収が「2週間弱」だったと説明されました。また、Logix向けの生成AIアシスタントFactoryTalk Design Studio Copilotも紹介されています。

5年間の工場・デジタル基盤・人材への投資
20億ドル
Rockwell Automation(Axendia、2025年12月)
FactoryTalk Energy Managerの投資回収期間
2週間弱
Rockwell自社工場での説明(DirectIndustry、2025年12月)

「2週間弱」の投資回収は同社の自社工場での説明で、対象設備の規模や電力単価などの条件は公表資料では確認できません。自社の工場に当てはめるには、条件を揃えて試算し直す必要があります。

第三者の評価:名前付きの新製品は少ない

米調査会社ARC Advisory Groupは、Automation Fair 2025について、名前付きの新しいAI製品の発表はなく、組み込みAI・AI外観検査・AIエネルギー監視がテーマだったと評価しています。

RockwellのAI戦略は、派手な新製品より、既存の制御機器・ドライブ・HMIにAIを組み込み、自社工場で実証してから顧客に出す堅実な進め方です。SiemensやMicrosoftのような「エージェント層」の構想と比べると、制御層に近いところでのAI活用に集中しています。

Rockwellの機器を使う日本の工場にとっての意味

  1. 既存資産を活かした予知保全:PowerFlexドライブを使っている設備なら、GuardianAIで追加センサーなしに予知保全を試せます。まず対象ドライブの台数と、止まると影響の大きい設備を洗い出します
  2. エッジSLMの検討:設備データを外に出したくない、ネットワークが不安定といった事情がある工場では、クラウドLLMではなくエッジSLMの構成が候補になります
  3. 生成AIの位置づけ:Design Studio Copilotなどの生成AIは、設計者の補助として使い、出力は必ず検証します

よくある質問

GuardianAIは日本で使えますか?

2024年7月10日に日本で一般提供が始まっています。PowerFlex 755/755T/6000Tのドライブと連携する製品で、対応ドライブで動く設備が対象です。

RockwellのSLMはクラウドLLMより精度が低くないですか?

一般に、パラメータ数の少ないSLMは汎用的な知識や推論で大型LLMに劣ります。一方、工場の特定の作業(操作手順の案内、アラームの説明など)に用途を絞り、関連データで補強すれば、遅延・データ持ち出し・費用の面で利点が上回る場合があります。用途を絞れるかが判断の分かれ目です。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。