設備250万台をつないだIIoT基盤

树根互联(Rootcloud)の根云平台は、工信部の双跨平台(跨行业跨领域工业互联网平台)に6年連続で選ばれています。高価値の工業設備250万台を接続し、20超の業界で1,000超の顧客を持つとされます(中华网、2025年9月17日)。

接続対象が「高価値」の設備とされている点が重要です。高価で、稼働場所が分散し、故障時の損失が大きい設備ほど、遠隔監視と予知保全の価値が大きくなります。そうした設備の稼働データを大量に集めてきたことが、AIへの転換の土台になっています。

根云平台が接続する高価値工業設備
250万台
中华网(2025年9月17日)
顧客数(20超の業界)
1,000超
同上
海外での初の単一受注額
1億元超
同上

IIoTからAIへ:時系列予測大模型と智能決策大模型

树根は、2種類の大規模モデルを開発しています(中华网、2025年9月17日)。

モデル何をするか使うデータ
時系列予測大模型部品の故障確率を予測する設備の稼働・センサーの時系列
智能決策大模型複数の設備が自律的に協調して動く判断設備の状態、作業計画

時系列予測大模型は、大量の設備の時系列データで事前学習したモデルを、個々の設備の予知保全に使う考え方です。1台ごとに異常検知モデルを作る従来の方法に比べ、データの少ない新しい設備にも、似た設備の学習結果を使える可能性があります。

設備接続、時系列データ蓄積、事前学習モデル、個別設備の予知保全の4段階 設備接続250万台 時系列の蓄積稼働・故障履歴 時系列予測大模型事前学習 個別設備の故障確率予測 故障の記録(いつ・どの部品が・なぜ)が時系列と紐づいていることが価値の源泉
IIoT基盤からAIへの転換の流れ。接続台数が増えるほど、事前学習に使える時系列データが厚くなる。

このほか、具身AIで溶接動作をリアルタイムに補正する智能焊接机器人(溶接ロボット)も開発していると報じられています(中华网、2025年9月17日)。

出典の性質を区別して読む

树根に関する数字は、出典の性質が混在しています。

数字出典性質
設備250万台、顧客1,000超、海外単一受注1億元超中华网(2025年9月17日)報道(企業の説明に基づく)
AIスーパーファクトリーで生産周期30日→7日、OEE 30.8%向上中国日报(2026年8月11日)広告記事
工業マルチエージェント群(スケジューリング・物流・検査・保全・工程最適化)中国日报(2026年8月11日)広告記事

日本の工場への示唆:つないだデータを「故障の記録」と紐づける

树根の転換で注目すべきは、AIの価値の源泉が接続台数そのものではなく、長年の稼働データと故障・修理の履歴の組み合わせにある点です。時系列データだけ大量にあっても、「いつ、どの部品が、なぜ壊れたか」の記録がなければ、故障確率は学習できません。

日本の工場でも、設備のセンサーデータは集め始めたものの、保全記録が紙や自由記述のままで、時系列データと紐づかないケースが多くあります。予知保全AIの成否は、センサーより保全記録の整備で決まることが少なくありません(予知保全AIの基本を参照)。

他の平台との違い:時系列に寄せたAI

中国の工業インターネット平台がAIに進む方向は、平台ごとに違います。海尔系の卡奥斯は機理モデル4,700超を持つ工業大模型とエージェント開発平台を前面に出し(卡奥斯天智工業大模型)、中控技术はプロセス産業の時系列大模型TPTで収益を伸ばしています。树根は、多種多様な設備の稼働データを基に、故障予測と設備間の協調に寄せている点が特徴です。

接続している設備の種類が、そのままAIの得意分野になっていると読めます。平台を選ぶときは、自社の設備と近い種類の設備をどれだけ接続しているかが、AIの効きやすさの目安になります(推測)。

接続基盤がAI事業に広がる構図

日本でも、建設機械や工作機械のメーカーが自社製品の稼働監視サービスを提供していますが、それを他社設備や他業界に開いた平台にし、さらにAIモデルに展開した例は多くありません。树根は20超の業界に顧客を持つ平台として、接続基盤からAIへの展開を進めている例です。

中国の政策は、工業インターネット平台を「基础级・成长级・引领级・生态级」の4段階で育成し、2028年に設備接続数1.2億台を目標にしています。平台の上にAIを載せる構図を、政策が後押ししている点は押さえておく必要があります。

よくある質問

時系列予測大模型は日本の工場の設備にも使えますか

今回の調査では、树根のモデルの日本での提供状況は確認できていません。一般論として、事前学習モデルは学習に使われた設備の種類と近い設備ほど効果が出やすく、まったく違う種類の設備では自社データでの調整が必要です。

海外の1億元超の受注はどの国ですか

今回参照した報道では、受注先の国や案件の内容は確認できていません。

この記事に出てくる用語

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。