20件の一覧

2024〜2026年に公表された、欧米企業(中国拠点を含む)の工場・エンジニアリング・保全での生成AIとCopilot型AIの事例を集めました。「出所」はその事例を発表した主体です。顧客自身ではなくベンダーやクラウド事業者の発表が大半を占めます。

#企業用途内容成果(公表値)出所・時期
1Merck & Co.外観検査GAN・VAEで合成した欠陥画像で検査AIを改善複数製品ラインで誤排除50%超削減AWS、2024年5月
2Vivix Vidros Planos(ブラジルのガラス)技能伝承MendixとAmazon Bedrockの「Virtual Engineer」で技術者を育成育成期間を「数年から数か月」に短縮AWS、2024年5月
3KONE保全Bedrockベースの技術者アシスタントで診断・解決を支援定量値なしAWS、2024年5月
4thyssenkrupp Automation EngineeringPLC開発Siemens Industrial CopilotでPLCコード生成、全世界展開コード品質と開発速度の向上(定性)Siemens、2025年5月
5Siemens Bad Neustadt工場生産管理Insights Hub Production Copilotで分散データを洞察化定量値なしSiemens、2025年5月
6Siemens Erlangen電子工場保全24時間の現場トラブルシュート・保全チャットボット定量値なしSiemens、2025年
7Senseye顧客(社名非公表)保全Maintenance Copilotのパイロット事後保全時間 平均約25%減Siemens、2025年3月
8SchaefflerエンジニアリングSiemens Industrial Copilotで現場のエンジニアリング・運用業務を自動化定量値なしAutomation World、2024年12月
9Schaefflerデータ照会スクラップ率・歩留まり・エネルギー使用量をチャットボットで照会定性(情報の民主化)Microsoft、2024年
10Bridgestoneデータ基盤AvanadeとFabric上に統合工場データ基盤、歩留まり損失・計画課題に対応定性Microsoft、2024年
11Intertape Polymer Group生産分析Sight Machine Factory CoPilot(Azure)で生産の洞察定性Microsoft、2024年4月
12Husqvarna検査・保全チェーンソーの外観QCにAI Vision Companion、夜勤者のトラブルシュートにチャットボットAzure IoT Operationsを2工場から40工場へ拡大計画Microsoft、2025年3月
13ABB(自社のプロセス顧客向け)エネルギー・保全Genix Copilotでセメント等の重要プロセスを最適化エネルギー15〜18%最適化、トラブルシュート時間60〜80%削減Microsoft(ABB事例)、2025年11月
14Cox Automotive(Fleet Mate)サービスAgentCoreとStrandsのエージェントで修理見積1台あたり48時間から30分未満AWS、2025年12月
15Schneider Electric 武汉工場保全・人材生成AIで保全要員を支援オンボーディング75日から15日、技術者の離職42%減WEF、2026年1月
16Valeo 深圳工場保全・品質14の高度アルゴリズムと生成AIのトラブルシュート不良率45.9%減、生産性60.2%向上(施策全体)WEF、2025年1月
17Schneider Electric 上海普陀工場保全LLMで保全事例を検索(AI検査・スケジューリングと併用)保全時間30%短縮(施策全体)上海市政府、2026年3月
18Tulip+Cognite顧客(社名非公表)現場アプリ現場アプリとAI-readyデータ不良70%減、能力40〜45%増Cognite(ベンダー主張)
193M作業改善Retrocausal Kaizen Copilotでエルゴノミクス・生産性改善を15工場に展開(画像認識型)定量値なしRetrocausal
20Siemens(Retrocausal顧客)組立画像認識の組立Copilot初回良品率10%向上、品質問題60%減Retrocausal(ベンダー申告)

19と20は大規模言語モデルではなく画像認識を使う「Copilot」型の製品です。現場では生成AIと同じ文脈で検討されることが多いため、比較のために含めました。

用途で見ると「保全」と「知識の引き出し」が中心

保全・トラブルシュート7件、データ照会・生産分析4件、検査・品質3件、エンジニアリング・PLC2件、技能伝承・人材1件、作業改善・組立2件、サービス1件の横棒グラフ 保全・トラブルシュート7 データ照会・生産分析4 検査・品質3 エンジニアリング・PLC2 作業改善・組立2 技能伝承・人材1 サービス1
20件を用途で分けた内訳(当サイトの分類)。保全と知識の引き出しが半数を占める。

最も多いのは保全・トラブルシュートで、KONE、Siemens Erlangen、Senseye顧客、Husqvarna、ABB、Schneiderの2工場が該当します。マニュアル・SOP・保全記録・設備のセンサーデータを組み合わせて、技術者の問いに答える構成が共通しています。AWSは2024年のHannover Messeで、Bedrock(生成AI基盤)とIoT SiteWise(設備データ)を組み合わせた保全アシスタントをデモしており、文書と設備データの両方を参照する形が標準的になりつつあります。

次に多いのが、Schaeffler・Bridgestone・Intertape Polymer Group・Siemens Bad Neustadtのような、工場データを自然言語で照会・分析する用途です。いずれも、前提として工場データの統合基盤があります。BridgestoneはFabricの統合データ基盤そのものが事例の中心です。生成AIを工場データに載せる設計は工場データに生成AIを載せる方法で扱っています。

定量値は半数に届かない

20件のうち、効果の数値があるのは10件です。そのうち、施策全体の効果として出ているもの(Valeo、Schneider普陀)や、ベンダーの主張にとどまるもの(Tulip+Cognite、Retrocausal)を除くと、生成AIそのものの効果として読める数値はMerck、Vivix、Senseye顧客、ABB、Cox Automotive、Schneider武汉の6件程度に限られます。

数値がある事例を見ると、効果が大きいのは「時間」の指標です。Cox Automotiveの48時間から30分未満、Schneider武汉の75日から15日、Vivixの数年から数か月は、いずれも人が情報を探して判断するまでの時間の短縮です。不良率やエネルギーのような生産の指標で生成AI単独の効果を示した事例は、Merck(合成画像による誤排除の削減)を除いてほとんどありません。

日本の工場が事例から読み取れること

もう1つ読み取れるのは、事例のほとんどがクラウド事業者または大手FAベンダーの基盤の上に作られている点です。KONE・Merck・Vivix・Cox AutomotiveはAWS、Schaeffler・Bridgestone・Husqvarna・ABBはMicrosoft、thyssenkruppとSiemens工場はSiemensの製品です。基盤の選定が、その後の拡張のしやすさと費用を左右します。保全向けの製品比較は保全Copilotの比較でも扱っています。

よくある質問

欧米では生成AIで不良率が下がった事例はないのですか?

公開事例では少数です。Merckは生成AI(GAN・VAE)で合成した欠陥画像を使い、外観検査の誤排除を50%超減らしました。これは生成AIを学習データの作成に使った例で、チャット型の生成AIで不良率を下げた事例は、公表値の範囲ではほとんど見当たりません。

事例の企業規模が大きいのは、中小企業では難しいということですか?

公開事例が大企業に偏るのは、ベンダーが知名度の高い顧客を紹介する傾向があるためでもあります。技術的には、文書検索型の保全アシスタントのように、小さな範囲から始められる用途もあります。ただし対象文書の整理と回答の検証には、規模に関係なく一定の工数がかかります。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。