選び方の結論:AIの「買い方」で制度が決まる

製造業のAI投資で補助金を選ぶとき、最初に見るべきは、AIをどう調達するかです。

  • 登録済みの既製ツール(クラウドのAI-OCR、生成AIサービスなど)を導入する → デジタル化・AI導入補助金
  • 自社の現場に合わせたAI外観検査、ロボットセル、設備の自動化を入れる → 中小企業省力化投資補助金(一般型)
  • AIを使って新しい製品やサービスを生み出す、新しい事業に進出する → 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
  • 売上10億〜100億円規模の企業が、工場投資を含めて1億円以上を投じる → 中小企業成長加速化補助金
  • AI人材の研修費 → 人材開発支援助成金

この記事の金額・補助率・日程は、中小機構の補助金活用ナビと各制度の公式サイトで2026年10月時点に確認した内容です。補助金は公募回ごとに要件や上限が変わります。申請前に、必ずその回の最新の公募要領で確認してください。

8制度の一覧(2026年10月時点)

#制度上限・補助率(2026年10月時点の公表内容)向いているAI投資
1デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)通常枠業務プロセス1〜3つで5万〜150万円、4つ以上で150万〜450万円。補助率は中小1/2(最低賃金近傍の事業者は2/3)登録済みのAIツール、クラウドサービス
2新事業進出・ものづくり商業サービス補助金革新的新製品・サービス枠は最大3,500万円(中小1/2、条件により2/3)。新事業進出枠・グローバル枠は最大9,000万円AIを使った新製品・新サービスの開発、新事業のための設備
3中小企業省力化投資補助金(一般型)最大1億円。補助金額1,500万円までは1/2(最低賃金引上げ特例は2/3)、超える部分は1/3オーダーメイドのAI外観検査、ロボットセル
4中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)最大1,500万円、補助率1/2以内カタログに登録された省力化製品
5中小企業成長加速化補助金最大5億円、補助率1/2以内。投資額1億円以上(税抜)が必要工場の新設・増設と合わせたAI・自動化投資
6人材開発支援助成金コースと企業規模で異なる。2026年8月3日版の支給要領を確認AI人材の研修費
7都道府県の上乗せ補助例:島根県(補助率3/4以内、上限3,000万円)、大分県(省力化一般型と合わせて補助率3/4、上限1億750万円)国の制度と同じ投資への上乗せ
8自治体の実証・サンドボックス事業事業ごとに異なる新しいAI技術の実証(例:長野県「信州AI GEARS」)

都道府県の上乗せ補助の数字は、補助金活用ナビに掲載された例です。対象や要件は自治体ごとに異なり、年度ごとに変わります。

AI投資の内容から補助金を選ぶフロー AI投資の内容 登録済みの既製ツール 現場に合わせた検査・ロボット 新製品・新事業 AI人材の研修 デジタル化・AI導入補助金 省力化投資補助金(一般型)大型なら成長加速化 新事業進出・ものづくり補助金 人材開発支援助成金 都道府県の上乗せ補助は、国の制度と組み合わせられるかを個別に確認する
AIの調達方法から制度を選ぶ流れ。既製品か、現場に合わせるか、新事業か、で分かれる。

制度ごとの要点

デジタル化・AI導入補助金

2026年度から「IT導入補助金」が「デジタル化・AI導入補助金2026」に名称を変えました。申請は登録された「IT導入支援事業者」を通し、対象は登録済みのITツールに限られます。このため、受託で開発するAIや自社開発のAIは原則として対象にしにくい制度です。2026年10月7日に公表された通常枠4次の採択結果は、申請1,836者に対し採択816者(約44%)でした。詳しくはデジタル化・AI導入補助金2026で扱います。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金

2026年度から、ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合されました。基本要件として、付加価値額の年平均成長率4.0%以上、賃上げ年平均3.5%以上(未達の場合は返還)などが求められます。実施期間は革新的新製品・サービス枠が交付決定から10か月です。統合前のものづくり補助金第22次は、申請1,552件に対し採択582件(約37.5%)でした。

中小企業省力化投資補助金

一般型は、個別の現場に合わせた設備導入やシステム構築を対象とし、AI外観検査やロボットセルのような「オーダーメイドの省力化」に向いています。詳細な事業計画が必要です。カタログ注文型は、カタログに登録された製品が対象で、販売事業者が申請を支援します。

中小企業成長加速化補助金

売上高10億円以上100億円未満の中小企業が対象です。賃上げ要件は1人当たり給与支給総額の年平均上昇率4.5%以上で、申請時までに「100億宣言」を公表しておく必要があります。補助事業期間は交付決定から24か月以内です。

人材開発支援助成金

厚生労働省の助成金で、7コースがあります。AI研修は、事業展開等リスキリング支援コースなどが候補になります。訓練の開始前に計画届が必要で、2026年5月14日の改訂以降、一部の申請では価格妥当性の様式(第28号)の提出が求められます。

受付中の公募(2026年10月7日時点)

中小機構の補助金活用ナビによると、2026年10月7日時点で受付中の公募は次のとおりです。

制度公募回締切
新事業進出・ものづくり補助金第1回2026年10月30日
デジタル化・AI導入補助金第6次/第7次10月30日/12月1日
中小企業省力化投資補助金(一般型)第8回2026年10月16日17:00
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)随時受付当面随時
中小企業成長加速化補助金第3回2026年11月12日15:00

締切は延長や変更されることがあります。日程の一覧は2026年度のAI関連補助金スケジュールで更新します。

よくある質問

複数の補助金を同じ投資に使えますか

国の補助金どうしで、同じ経費に重ねて受け取ることは原則としてできません。都道府県の上乗せ補助は、国の補助金と組み合わせられる設計のものがあります。併用の可否は、それぞれの公募要領で確認してください。

採択されたら、すぐに発注してよいですか

補助金の多くは、交付決定の後に発注・契約したものだけが対象になります。採択の通知と交付決定は別の手続きなので、交付決定通知を受け取ってから発注してください。

AIのクラウド利用料は対象になりますか

制度と枠によって扱いが異なり、対象になる期間にも限りがあります。補助事業期間が終わった後の運用費は自社負担になると考えて、回収計画を立ててください。対象経費は必ずその回の公募要領で確認してください。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。