AI Acceleratorは協働ロボットに「目と判断」を足すモジュール

Universal Robots(UR)のAI Acceleratorは、同社のコントローラーソフトウェアPolyScope X上で、URの協働ロボット(UR/e-Series)にビジョンとAIによる動作生成を追加する、ハードウェアとソフトウェアのプラットフォームです。NVIDIAのエッジAI向けコンピューターJetson Orinを内蔵しています(同社製品ページ)。

従来、協働ロボットにビジョンを付けるには、ビジョンシステムを別途用意し、ロボットとの通信やキャリブレーションを個別に作り込む必要がありました。AI Acceleratorは、ロボットメーカー自身がAI処理用のコンピューターとソフトウェアの土台を用意した点に意味があります。

基盤となるソフトウェアはNVIDIAのIsaac ROSです。ROS(Robot Operating System、ロボット開発の共通ソフトウェア基盤)上で動くNVIDIAのAI処理ライブラリ群で、2026年9月22日のROSConでIsaac ROS 5.0が公開されました。発表の主な内容は次のとおりです(NVIDIA発表)。

項目内容
姿勢推定の高速化物体の位置・姿勢を推定するFoundationPoseの推論ライブラリが最大5.5倍高速に
再利用可能なスキルピック&プレースなどを「Isaacスキル」として提供。単体で動く「agent-ready」のピック&プレーススキルを含む
AIエージェント対応AIエージェント向けのドキュメントを用意
採用例URはAI Accelerator SDKに組み込み。IntrinsicはOpen Machine Tending SolutionでFoundationPoseを利用

何ができるようになるか

協働ロボットとAIモジュール、安全機能、上位システムの関係 上位システム(MES・生産管理):作業指示・品番・実績 AIモジュールJetson+カメラ認識・姿勢推定・経路 ロボットコントローラー動作の実行既存の教示プログラム 安全機能力・速度制限、安全センサAIから独立して動作 AIは「どこをつかむか」を決め、ロボットと安全機能は従来どおり「どう安全に動くか」を担う
既存の協働ロボットセルにAIモジュールを追加する構成。安全機能と上位システムとの接続は従来のまま残す。

AIモジュールを足すことで、協働ロボットに次のような機能を加えられます。

  1. 位置がばらついたワークの把持:トレーや作業台に置かれた部品の位置・姿勢を認識してつかむ。治具で位置を固定する必要が減る
  2. 品種の判別:複数の品番が混在するとき、カメラで見分けて動作を切り替える
  3. 機械への部品供給(マシンテンディング):工作機械や検査装置へのワークの出し入れ。IntrinsicのOpen Machine Tending Solutionはこの用途向け
  4. 撮像による簡易検査:ロボットにカメラを持たせ、取り付け状態などを確認する

いずれも、すでに協働ロボットで行っている作業の「前提条件」を緩めるものです。決まった場所に決まった向きで置く必要があった作業で、置き方のばらつきを許容できるようになります。

段階導入が現実的な理由

フィジカルAIの議論ではヒューマノイドやロボット基盤モデルが注目されがちですが、工場で当面使われるのは、既存のロボットにAIモジュールを足す形だと考えられます。安川電機とソフトバンクは2026年7月、フィジカルAIを既存ロボットシステムの「一機能モジュール」として組み込む構成で柔軟物のハンドリングを実証しました。ファナックは2026年5月、「人にぶつからないAIロボット」にJetson Thorを採用すると発表し、2025年12月以降にフィジカルAI関連で1,000台以上のロボットを出荷したとしています(各社発表)。

エッジでAIを動かす機器の選び方はエッジAIとはで解説しています。

導入時の注意点

ほかに確認したい点として、次の3つがあります。

  • タクト:認識と経路計算の時間が加わるため、サイクルタイムが延びることがあります。実ワークで計測してください
  • 照明:カメラを使う以上、工場の照明や外光の変化で認識が不安定になることがあります。外観検査と同じく、撮像条件の固定が効きます
  • ソフトウェアの更新:AIモジュールのソフトウェアやモデルが更新されたとき、動作が変わる可能性があります。更新の手順と、更新前後の確認方法を決めておきます

最後の点は見落とされやすいですが、AIのモデルが変わればロボットの挙動も変わりうるため、設備の変更管理の対象として扱う必要があります。

よくある質問

UR以外の協働ロボットでも同じことができますか

各ロボットメーカーがJetsonなどのAI処理機器との連携を進めています。GTC 2026では、FANUC、ABB Robotics、KUKA、安川電機がロボットコントローラーへのJetson採用を発表しました。対応製品と提供時期はメーカーごとに確認してください。

プログラミングの知識がなくても使えますか

ピック&プレースのような定型スキルは、設定中心で使えるよう整備が進んでいます。ただし、自社のワークに合わせた調整や、上位システムとの連携には、ロボットとROSの知識を持つ担当者かシステムインテグレーターの支援が必要になることが多いです。

既存のビジョンシステムとどちらがよいですか

決まった形状のワークの位置補正なら、従来のビジョンシステムで十分なことが多いです。品種が多い、形が不定、事前の登録を減らしたいといった場合に、学習型の認識を持つAIモジュールが有利になります。

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この特集について

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。