VLAは「見て、指示を読んで、動く」を1つのモデルで行う
VLA(Vision-Language-Action)モデルは、カメラ画像(Vision)と言語の指示(Language)を入力として、ロボットの関節や手先の動き(Action)を出力するモデルです。従来のロボットシステムでは、物体認識、作業計画、軌道生成を別々のモジュールで作り、モジュール間のつなぎを人が設計していました。VLAはこれを1つのニューラルネットワークで学習します。
土台になっているのは、画像と文章を扱うVLM(視覚言語モデル)です。Webの大量の画像と文章で事前学習したVLMは、「赤い部品」「左の箱」といった言葉と画像の対応をすでに知っています。VLAはそこにロボットの動作データを追加で学習させ、知識を動作に結び付けます。
4つの節目で見る技術の流れ
RT-2(2023年7月):行動をテキストのように出す
Google DeepMindのRT-2は、VLMをロボットの軌道データとWeb規模の視覚言語タスクで同時に微調整し、ロボットの行動をテキストトークンとして出力しました。6,000回の評価試行で未知の物体への汎化が向上し、学習データにない指示(特定の数字やアイコンの上に置く等)にも従えたと報告しています。Webの知識が動作に移ることを示した点が重要でした。
π0(2024年10月):flow matchingで滑らかな連続動作を出す
Physical Intelligenceのπ0は、事前学習済みVLMに、flow matching(拡散モデルに近い生成手法)で連続的な動作を出力する部分を加えました。同社の説明では、30億パラメータのVLMを土台に最大50Hzで動作指令を出し、8種類のロボットのデータで学習しています。洗濯物畳み、テーブル片付け、箱の組立など、手先の器用さが要る作業を実行しました。行動をトークンに区切るRT-2型より、細かく滑らかな動きを出しやすい方式です。
GR00T N1(2025年3月):遅い推論と速い動作の2系統
NVIDIAのGR00T N1は、VLMで状況を理解し計画する遅いSystem 2と、拡散トランスフォーマーで動作を生成する速いSystem 1を組み合わせ、両者をエンドツーエンドで共同学習しました。実ロボットの軌道、人の動画、合成データを組み合わせて学習している点が特徴です。人の思考になぞらえた2系統の構成は、Figure AIのHelixなど他社のモデルにも見られます。
π0.5(2025年4月):未知の環境への汎化
π0.5は、他のロボットのデータ(クロスエンボディメント)とWebのマルチモーダルデータで共学習し、学習に含まれない家庭環境で食器の片付けやベッドメイクを実行しました。まずテキストでサブタスクを出力し、次にflow matchingで50ステップ(約1秒分)の動作チャンクを生成する2段構成です。学習環境が約100に達すると、テスト環境で直接学習したベースラインに近い性能になったと報告しています。
| モデル | 発表 | 動作の出し方 | 示したこと |
|---|---|---|---|
| RT-2 | 2023年7月 | 行動をテキストトークンとして出力 | Webの知識が未知物体・指示への汎化に効く |
| π0 | 2024年10月 | flow matchingで連続動作 | 複数機体のデータで器用な作業 |
| GR00T N1 | 2025年3月 | System 2(VLM)+System 1(拡散) | 実データ・人の動画・合成データの組合せ |
| π0.5 | 2025年4月 | サブタスク文+動作チャンク | 未知環境への汎化 |
製造現場で効く点:汎化と少量データでの適応
製造業にとってVLAの価値は2つあります。1つは、形状や配置が毎回違うワークへの対応です。ばら積み、混載、柔軟物のように、教示やルールで書き切れない作業ほど学習型の利点が出ます。もう1つは、新しい作業を少ないデータで覚えられる可能性です。TRI(Toyota Research Institute)は2025年7月、マルチタスクで事前学習したモデルは新しいタスクを単一タスク学習より少ないデータで習得できたと、盲検・無作為化の試験で報告しています。
日本の実例では、安川電機とソフトバンクがVLAを使ってワイヤーハーネスなど柔軟物のハンドリングを実証し、VLAを既存ロボットシステムの「一機能モジュール」として組み込む構成を取りました(2026年7月)。全工程をVLAに任せるのではなく、従来制御が苦手な部分に限定して使う設計です。
製造現場で効かない点:確実性・速度・検証性
量産ラインで問題になるのは次の3点です。
- 確実性:同じ入力に同じ出力が出るとは限らない。失敗時のリカバリと人の介入を前提にした設計が要る
- 速度:動作チャンクを生成する推論に時間がかかり、専用機のサイクルタイムに届かない作業が多い
- 検証性:なぜその動作を選んだかを説明しにくく、品質保証や安全審査で扱いにくい
このため現時点の実装は、VLAの出力を従来の安全機能と範囲チェックで囲み、失敗を検知したらやり直す構成が中心です。
各モデルの詳細はπ0・π0.5の解説とNVIDIA Isaac GR00T、比較はロボット基盤モデル5種の比較で扱います。
よくある質問
VLAとVLMの違いは何ですか
VLMは画像と文章を入力に文章を出力するモデルで、VLAはそれに動作の出力を加えたモデルです。VLAの多くはVLMを土台にしており、VLMが持つ物体や言葉の知識を動作に結び付けています。
VLAを自社のロボットで使うには何が必要ですか
対象のロボットでの動作データ(カメラ映像と関節の動きの組)と、推論用のGPUが必要です。多くのモデルは特定の機体で学習されているため、自社の機体と作業でのデモデータを追加して微調整するのが一般的です。
VLAは従来のビジョン付きロボットより優れていますか
変動の大きい作業への対応力では優れる場合がありますが、決まった作業の速度と確実性では従来方式が有利です。工程ごとに使い分けるのが現実的です。
- RT-2: Vision-Language-Action Models Transfer Web Knowledge to Robotic Control(arXiv, 2023年7月28日)
- π0: A Vision-Language-Action Flow Model for General Robot Control(arXiv, 2024年10月31日)
- π0: Our First Generalist Policy(Physical Intelligence, 2024年10月31日)
- GR00T N1: An Open Foundation Model for Generalist Humanoid Robots(arXiv, 2025年3月18日)
- π0.5: a VLA with Open-World Generalization(Physical Intelligence, 2025年4月22日)
- A Careful Examination of Large Behavior Models for Multitask Dexterous Manipulation(arXiv, 2025年7月7日)
- 安川電機とソフトバンク フィジカルAIを活用し柔軟な物体のハンドリングシステムを実証(安川電機, 2026年7月13日)
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