質問リストの使い方:提案依頼と同時に送る
質問リストは、提案依頼(RFP)に添付して全候補ベンダーに同じ形式で回答してもらう表です。60問は6分野に分かれ、各問に「必須/任意」と「PoC前に確認/契約前に確認」の区分を付けています。必須の問いに回答がないベンダーは、その時点で比較から外す判断材料になります。
選び方の考え方は製造業AIベンダーの選び方で解説しています。RFPの書き方はAI開発のRFPの書き方を参照してください。
| 分野 | 問数 | 主に確認すること | 回答を読む人 |
|---|---|---|---|
| A 実績と体制 | 8 | 同業種・同用途の実績、担当者、再委託の有無 | DX推進 |
| B データの扱い | 12 | 必要なデータ、持ち出しの有無、保管場所、学習への再利用 | 情報システム・品証 |
| C 精度と評価 | 12 | 精度の数字の条件、評価方法、過検出・誤報の扱い | 生産技術・品証 |
| D 導入と連携 | 10 | 設備・MES・PLCとの接続、エッジかクラウドか、工期 | 生産技術・情報システム |
| E 運用と保守 | 10 | 再学習、精度劣化の監視、障害対応、サポート終了 | 保全・情報システム |
| F 権利と費用 | 8 | 成果物の権利、料金体系、追加費用、契約解除時のデータ | 購買・法務 |
分野ごとの主な質問と、回答の見方
全60問のうち、回答の差が出やすい質問を分野ごとに抜き出して示します。
| No. | 質問 | 見るポイント |
|---|---|---|
| A-3 | 同じ用途・同程度の規模で本番稼働している事例は何件ありますか。うちPoCで終わった件数は | 本番稼働の件数を答えられるか。PoC件数だけを出すベンダーは本番の経験が浅い可能性 |
| A-7 | 開発・保守の一部を再委託しますか。する場合、再委託先とデータの取扱いは | 再委託先にデータが渡るかどうか |
| B-2 | PoCと本番で、データを社外(クラウド・ベンダー社内)に出す必要がありますか | 図面・画像・レシピを出せない工場では、オンプレ・エッジで完結するかが分かれ目 |
| B-6 | 当社のデータを、他社向けのモデル改善に使いますか | 「使わない」と契約書に書けるか |
| B-9 | 必要なデータの形式・期間・件数の下限は。不足する場合の対処は | 件数の根拠を示せるか。「多いほどよい」だけの回答は要注意 |
| C-1 | 提示された精度の数字は、どのデータ・どの閾値・どの指標で測ったものですか | AUROCなど閾値に依存しない指標だけでは、現場の見逃し・過検出は分からない |
| C-4 | 過検出(良品を不良と判定)が出た場合、人が確認する運用をどう設計しますか | 過検出ゼロを約束するベンダーより、運用設計を示すベンダーの方が現実的 |
| C-8 | 品種追加・材料変更・照明の経年変化で精度が落ちた場合、どう検知しますか | ドリフト(入力データの変化)監視の仕組みがあるか |
| D-3 | 判定結果をMESや品質記録にどう渡しますか。ロット・シリアルとの紐付けは | 「CSV出力できます」で止まる回答は、連携の作り込みが発注側負担になる |
| D-6 | 推論はエッジとクラウドのどちらで行いますか。ネットワーク断の場合の動作は | ライン停止につながる設計になっていないか |
| E-2 | 再学習は誰が、どの頻度で、いくらで行いますか。当社側で再学習できますか | 再学習のたびに外注費が出る構造かどうか |
| E-9 | 製品・サービスの提供を終了する場合、何か月前に通知し、モデルとデータをどう引き渡しますか | ロックイン(特定ベンダーへの依存)の度合い |
| F-1 | 学習済みモデル、学習データ、評価結果の権利は誰に帰属しますか | 契約書の条項として示せるか |
| F-5 | 料金は買い切り・サブスク・従量・成果報酬のどれですか。ライン追加時の費用は | 横展開時の費用が明示されているか |
回答の比較表と記入例
回答を受け取ったら、比較シートに各社の回答を要約し、問ごとに3段階(◎明確/○条件付き/×不明確・未回答)で評価します。点数の合計で決めるのではなく、必須の問いで×がないかを先に見ます。
記入例として、外観検査AIの3社を比べた場合の一部を示します(架空の例です)。
| No. | 質問(要約) | 甲社(パッケージ) | 乙社(受託開発) | 丙社(スタートアップ) |
|---|---|---|---|---|
| B-2 | データの社外持ち出し | ◎エッジ完結、持ち出しなし | ○PoCのみ社内に持ち帰り | ×クラウド前提、回答に保管国の記載なし |
| C-1 | 精度の数字の条件 | ○自社デモ品での値 | ◎当社サンプルで見逃し率・過検出率を提示 | ×公開データセットのAUROCのみ |
| D-3 | MESへの結果連携 | ×CSV出力のみ | ◎ロットID付きでAPI連携 | ○MQTTで配信、受け側は当社 |
| E-2 | 再学習の担当と費用 | ◎当社で画面から再学習可 | ×都度見積 | ○月額に含む(年4回まで) |
| F-1 | モデルの権利 | ○利用権のみ | ◎当社に帰属 | ×回答なし |
この例では、甲社は運用面で強い一方MES連携が弱く、乙社は連携と権利で優れる一方再学習の費用が読めず、丙社はデータと権利の回答が不足しています。どの弱みを自社で補えるか(MES連携を自社で作れるか、再学習費を予算化できるか)で判断が分かれます。
質問するときの注意
60問すべてを最初に送ると、ベンダーの回答負担が大きく、提案自体を辞退されることがあります。一次選考では必須の問い(約30問)だけを送り、PoC候補に残った2〜3社に残りを送る2段階が現実的です。
回答は口頭ではなく書面でもらい、契約書の別紙や仕様書に反映させます。特にB-6(他社向けの再利用)、F-1(権利)、E-9(提供終了時の引き渡し)は、回答と契約書の条項が一致しているかを購買・法務が確認します。
よくある質問
中小企業でも60問すべて聞く必要がありますか?
必要ありません。既製品(パッケージ)を導入する場合は、B(データ)、C(精度)、E(運用)の必須問いだけでも十分に比較できます。受託開発を頼む場合は、F(権利と費用)を省かないでください。
回答が曖昧なベンダーは外すべきですか?
必須の問いへの回答が曖昧な場合は、一度だけ追加質問をし、それでも具体的にならなければ比較から外して構いません。精度の数字の条件(C-1)とデータの持ち出し(B-2)に答えられないベンダーとPoCに進むと、後で評価の前提が合わなくなります。
海外ベンダーにも同じ質問で問題ありませんか?
問題ありません。海外ベンダーには、データの保管国、日本語サポートの範囲、国内の代理店と本社の責任分担を追加で確認します。質問票の各分野の末尾に、海外ベンダー向けの追加質問欄を設けています。
6分野60問の質問票と、3社の回答を並べる比較シートのセットです。必須・任意の区分つき。
