原単位は「電力×稼働状態×品目」の3つがそろって出せる

エネルギー原単位とは、製品1個(または1kg、1ロット)を作るのに使ったエネルギー量です。工場全体の電力量を総生産量で割れば平均の原単位は出ますが、品目ごとの違いや、停止中・段取り中に使った電力の扱いは分かりません。

品目別の原単位を出すには、設備ごとの電力量を、その時刻にその設備で何が起きていたか(生産中か停止中か、どの品目・ロットを作っていたか)と紐付ける必要があります。設備の稼働状態と生産品目を時刻つきで持っているのはMESです。電力データとMESの実績を時刻で突き合わせることが、原単位算出の中心作業になります。

このデータは省エネだけでなく、製品別のCO2排出量(CFP)の算定にもそのまま使えます。省エネとCFPを別々のプロジェクトで進めると、同じデータ基盤を二重に作ることになります。

電力とMES実績の紐付け 設備Aの電力(1分値) MESの稼働区間 生産:品目X ロット101 段取り 生産:品目Y ロット205 停止 生産:品目X ロット102 区間ごとに電力量を積算 → 生産区間はロットへ、段取り・停止は配賦ルールで品目へ 原単位=(生産区間の電力量+配賦分)÷ 良品数
電力の時系列をMESの稼働区間で切り分け、品目・ロットに配賦する。

紐付けに必要な3つのキー

キー内容よくある問題
設備ID電力計の計測点とMESの設備マスタの対応電力計が複数設備をまとめて測っている。設備の改造で対応が変わる
時刻電力データとMES実績のタイムスタンプPLC・電力計・MESの時計がずれている。タイムゾーンや夏時間の扱い
品目・ロットその時刻に生産していた品目・ロットMESに開始・終了時刻が記録されず、日報の手入力しかない

設備IDの対応は、計測点の設計段階で決めます。1つの電力計が複数の設備をまとめて測っていると、設備別には分けられません。省エネのための計測点を増やすときは、MESの設備マスタの単位に合わせて計測点を置くのが原則です。

時刻のずれは、見落とされやすい問題です。電力計のデータロガー、PLC、MESサーバの時計がそれぞれずれていると、1分単位で突き合わせたときに稼働区間の境目で電力量が隣の区間に入ります。NTPなどで時刻を同期し、ずれを定期的に確認します。

停止・段取り中の電力をどう配賦するか

稼働区間ごとに電力量を積算すると、生産中の電力はその品目・ロットに直接割り当てられます。問題は、段取り中・停止中・待機中の電力と、空調・照明・コンプレッサなど共通設備の電力です。

配賦のルールは目的によって変えます。

  • 省エネの改善が目的なら、段取り・停止中の電力は配賦せず、別に集計して見える化する(改善対象として目立たせる)
  • 原価計算やCFP算定が目的なら、段取りは直後に生産した品目に、停止・待機は生産時間の比率で品目に配賦する
  • 共通設備の電力は、生産時間、生産重量、床面積などの基準で配賦する

どのルールを採用したかを文書に残し、年度の途中で変えないことが重要です。配賦ルールが変わると、原単位の推移を比べられなくなります。

MES側で整えておくデータ

MESに稼働状態の開始・終了時刻が記録されていない工場では、まずそこから整えます。日報の手入力では、分単位の突き合わせはできません。設備のPLCから稼働信号を取得し、MESの作業実績(品目・ロット・開始・終了・良品数・不良数)と統合するのが基本形です。

停止理由のコードもあわせて整えると、「どの停止理由のときに電力が多く使われているか」が分かります。停止理由コードの設計は不良コード・停止理由コードの設計で扱います。MESのデータをAIに使う全般の考え方はMESとAIの関係を参照してください。

小さく始める範囲

すべての設備で一度に原単位を出そうとすると、計測点の追加とMESの改修で時間がかかります。最初は、エネルギー使用量が大きく、品目の切替が多い設備を1〜2台選び、そこで電力とMESの紐付け、配賦ルール、時刻同期の確認までを一通り行います。仕組みが固まれば、同じ設計を他の設備に展開できます。

原単位が使えるようになると何ができるか

品目別・ロット別の原単位が出せると、次のことができます。

  • 同じ品目でもロットや設備によって原単位がばらつく原因(段取り回数、設備の状態、作業者)を分析する
  • 原単位が悪化した設備を検知し、保全や運転条件の見直しにつなげる
  • 生産スケジュールを組むときに、エネルギーの多い品目を電力単価の安い時間帯に寄せる
  • 製品別CO2排出量(CFP)を、実測に基づいて算定する

CFP算定への展開は製品別CO2排出量(CFP)の算定とAIで扱います。工場全体の省エネAIの進め方は工場の省エネAIを参照してください。

よくある質問

原単位の分母は個数と良品数のどちらにすべきですか

目的によります。省エネや品質改善の評価では、不良品に使ったエネルギーも含めて良品数で割ると、不良の削減が原単位の改善として見えます。CFPの算定では算定ルールに従います。どちらを使うかを決めて変えないことが重要です。

電力の取得間隔はどのくらい必要ですか

稼働区間の長さによります。段取りや短い停止を区別したい場合は1分程度、品目の切替が1日に数回なら15分でも実用になります。

MESがなくても原単位は出せますか

設備の稼働信号と、生産品目・数量の記録が時刻つきであれば出せます。ただし日報の手入力では分単位の突き合わせができないため、少なくとも稼働状態と品目の切替時刻を自動で記録する仕組みが必要です。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。