Kozuchiは「AI部品をすぐ試せる基盤」から始まった

Fujitsu Kozuchiは、富士通が2023年4月20日に発表したAIプラットフォームです。先端AI技術をPoCで迅速に使えるようにすることが目的で、第1弾にはスマートファクトリー向けの「作業者分析」と「不良品検出」が含まれていました。作業者分析では、従来3カ月以上かかっていたPoCの構築を3日で完了した実績が紹介されています(富士通アイ・ネットワークシステムズ山梨工場で先行導入、クラウドWatch、2023年4月)。

その後、富士通は自社開発のLLM「Takane」を加え、2025年12月24日にNVIDIAとの協業の最初の成果として「Fujitsu Kozuchi Physical AI 1.0」を発表しました。名前に「Physical AI」とありますが、発表時点の中身はロボット制御ではなく、業務を担うAIエージェントの基盤です。

2023年4月のAIプラットフォーム、Takaneの追加、2025年12月のKozuchi Physical AI 1.0、今後のロボット連携という時系列 2023年4月AIプラットフォーム LLM Takaneを追加 2025年12月Physical AI 1.0 今後ロボット連携へ拡張
Kozuchiの位置づけの変化。AI部品の基盤から、LLMとエージェントの基盤へ広がった。

Physical AI 1.0の中身:エージェント基盤と購買の3エージェント

Kozuchi Physical AI 1.0には、Takaneベースの「Kozuchi AI Agent」、マルチAIエージェントフレームワーク、NVIDIA NIM(NVIDIAのAIモデル配信用マイクロサービス)への対応が含まれます。異なるベンダーのエージェントを安全に接続する「セキュアエージェントゲートウェイ」とGUIの構築画面を備え、マルチAIエージェントフレームワークのトライアル提供が始まりました(ビジネス+IT、2025年12月)。

製造業に関係する実装例として示されたのが、購買部門向けの3エージェントです。

エージェント役割
帳票理解注文書・見積書などの帳票を読み取り、項目を構造化する
購買規約解析社内の購買規約や取引条件を解析する
適合チェック帳票の内容が規約・条件に合っているかを確認する

この構成での実証では、発注確認業務の工数が約50%削減されたとされています。ただしこれは富士通の社内実証の結果です。対象となった発注の件数、帳票の種類、比較した期間は公表情報からは分かりません。

購買部門の発注確認業務の工数削減
約50%
富士通社内実証(2025年12月発表)
作業者分析のPoC構築期間(従来3カ月以上)
3日
富士通発表(2023年4月、グループ工場での先行導入)

数字をどう読むか:社内実証・見込み・第三者検証を分ける

生成AIのベンダー発表では、効果の数字の性質がばらばらです。SAPは「最大40%」のような見込み値をベータ時点で示し、Siemensは「最大50%」をビジョンとして掲げています。富士通の50%は社内実証で、少なくとも実際に動かした結果ではありますが、自社の帳票や規約で同じ結果が出る保証はありません。

購買の確認業務は、帳票の形式が多いほど、規約の例外条件が多いほど、AIの読み違いが増えます。逆に、取引先が少なく帳票の形式が揃っている会社では、数字以上の効果が出ることもあります。どちらに当たるかは自社の帳票で試すしかありません。数字の読み方はベンダー発表の効果数値の読み方、調達業務への生成AIの適用は見積比較・調達業務の生成AIで詳しく扱っています。

富士通を選ぶ理由になりうる点と、確認すべき点

国内の製造業が富士通を検討する理由になりうるのは、自社IPのLLMとソブリンクラウド(国内で管理されるクラウド)への対応です。富士通はKozuchiとTakaneをソブリンクラウドに対応させており、経済安全保障や機密情報の観点から海外クラウドを避けたい企業には選択肢になります。また2026年9月には、コンサルティングとFDE(顧客の現場に入って伴走するエンジニア)による支援を打ち出し、成果連動型や利用量連動型の収益モデルへ移ると表明しました(MONOist、2026年10月)。

成果連動型の契約は、ユーザーにとってPoC費用のリスクを減らす一方で、成果の定義でもめやすい形式です。工数削減を成果にする場合、削減した時間をどう計測するかを契約前に決めておく必要があります。また、購買のような事務系の業務から始める場合でも、品番や取引先のマスタがERPやMESと一致していないと、エージェントは突き合わせに失敗します。マスタの整備状況は早めに確認してください。

よくある質問

Kozuchi Physical AI 1.0でロボットを動かせますか?

2025年12月の発表時点では、購買業務のような事務系業務のエージェントが中心です。富士通は今後、物理ロボットと連携する現実環境のタスクに拡張する方針を示しています。

Takane以外のLLMも使えますか?

マルチAIエージェントフレームワークは、異なるベンダーのエージェントを安全に接続するゲートウェイを備えるとされています。どのLLMやエージェントを組み合わせられるかは、提案時に具体的な構成で確認してください。

中小企業でも使えますか?

公表されている事例は富士通自身やグループ企業での実証が中心です。中小企業向けの価格体系は参照資料では確認できていません。まず対象業務を一つに絞り、評価用データを用意して見積もりを取るのが現実的です。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。