外国人作業者の比率は製造業で高い

2026年版ものづくり白書によると、製造業の就業者に占める外国人の割合は6.1%で、非製造業の約2倍です。生産工程従事者の有効求人倍率は1.60倍で、人手不足の中で外国人作業者への依存は今後も高まると考えられます。

製造業の就業者に占める外国人の割合(非製造業の約2倍)
6.1%
2026年版ものづくり白書(RIETI BBL資料、2026年6月26日)
生産工程従事者の有効求人倍率
1.60倍
同上

一方で、教育にデジタル技術を使って成果を出している中小企業もあります。プラスチック成形の天昇電気工業(三重工場140人)は、動画マニュアルと動画比較ツールを導入し、熟練者レベルまでの習熟期間を約7分の1にしたと中小機構の事例集で紹介されています。言葉に頼らない動画と、言葉で補う翻訳を組み合わせることが、多言語の現場づくりの基本線です。

運用設計1:「配信する文書」と「生成する回答」を分ける

最も重要なのは、生成AI翻訳を使う範囲を決めることです。

多言語作業指示の2系統。承認済み翻訳の配信と生成AIによるQ&A 配信する(生成しない) 重要工程・安全作業の手順書 警告表示・禁止事項 承認済みの多言語版を版管理 生成AIを使う 手順書の内容に関するQ&A 一般作業・連絡事項の翻訳 回答に原文の該当箇所を表示
重要工程の作業指示は承認済み翻訳を配信し、生成AIは質問への回答と補助に使う。

重要工程の作業手順書、安全作業の手順、警告表示は、生成AIにその場で訳させず、事前に翻訳して人が確認・承認した版を配信します。生成AIを使うのは、作業者が手順書を読んで分からなかった点を母語で質問し、手順書の該当箇所に基づいて答える場面と、重要度の低い連絡事項の翻訳です。

この線引きにより、誤訳のリスクが高い箇所は人の確認済みの文書に限定され、生成AIの誤りは「質問への回答」という補助的な範囲にとどまります。

運用設計2:誤訳に気づいたときの止め方を決める

翻訳精度を100%にすることはできません。重要なのは、誤訳や理解の食い違いが起きたときに、作業を止めて確認できる仕組みです。

  • 現場端末の回答画面に「不明な点は作業を止めて班長に確認」という表示と呼び出しボタンを置く
  • 回答には、根拠になった手順書の原文(日本語)と翻訳版の該当箇所を並べて表示し、班長がその場で照合できるようにする
  • 作業者が「分かりにくい」と押せるボタンを用意し、その記録を週次で確認して手順書と用語集を直す

運用設計3:用語と手順書を先に整える

生成AIの回答品質は、元の手順書の品質を超えません。日本語の手順書に「適宜」「しっかり」「規定量」のような曖昧な表現が多いと、どの言語に訳しても曖昧なままです。

多言語化の前に、次の点を手順書で直します。

  1. 曖昧な表現を数値や具体的な動作に置き換える(「しっかり締める」→「トルクレンチで25N・mまで締める」)
  2. 1文を短くし、1文に1つの動作だけを書く
  3. 部品名・工具名を写真付きで示し、用語集の訳語と対応させる

訳語の管理と品質確認の方法は製造業の技術翻訳を生成AIでで詳しく扱っています。作業手順書そのものを生成AIで作る方法は作業手順書を生成AIで作るを参照してください。

運用設計4:端末と言語の範囲を現実的に決める

現場で使える端末(共用タブレット、MESの作業端末、個人のスマートフォン)によって、できることが変わります。MESの作業端末に組み込む場合は、作業者のログイン情報から母語を判定し、作業中の工程の手順書を自動で表示できます。個人のスマートフォンを使う場合は、写真や図面が端末に残る情報管理上の問題を整理する必要があります。

対応言語は、在籍する作業者の母語を数えて、上位の言語から順に承認済み翻訳を整えます。すべての言語の承認版を一度にそろえるのは負担が大きいため、承認版がない言語は「やさしい日本語」版と生成AIのQ&Aで補う、という段階的な対応が現実的です。外国人従業員の教育全体は外国人従業員とAIで扱っています。

よくある質問

音声で質問できるようにすべきですか

手がふさがる作業や、文字入力に慣れていない作業者が多い現場では、音声入力が有効です。ただし騒音の大きい現場では認識精度が下がるため、試験運用で確認してください。

やさしい日本語と多言語翻訳はどちらを優先すべきですか

在籍者の母語が多岐にわたる現場では、まずやさしい日本語の手順書を整えるほうが、すべての作業者に効きます。母語が1〜2言語に集中している現場では、その言語の承認済み翻訳を優先します。

生成AIの回答ログは作業者の監視になりませんか

質問内容は手順書の改善に使い、個人の評価には使わないことを事前に説明し、合意を得てください。目的外利用をしない運用を明文化しておくと、作業者が質問をためらわなくなります。

この記事に出てくる用語

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この特集について

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。