異常検知は「いつもと違う」、分類は「どの種類か」を答える
異常検知は、正常なデータの特徴を学習し、そこから外れたものを「異常」として知らせます。学習に使うのは原則として正常データだけで、出力は異常かどうか(または異常の度合い)です。外観検査では「良品学習」と呼ばれる方式がこれに当たります。
分類は、あらかじめ決めたクラス(良品、傷、打痕、異物など)のどれに当たるかを答えます。学習にはクラスごとにラベルを付けたデータが必要で、出力はクラス名です。不良の位置まで示す物体検出やセグメンテーションも、ラベル付きデータで学習する点では同じ仲間です。
| 観点 | 異常検知 | 分類 |
|---|---|---|
| 学習データ | 正常データが中心(不良は評価用に少数) | クラスごとのラベル付きデータ |
| 出力 | 異常か否か、異常度 | 不良の種類(クラス名) |
| 未知の不良 | 検出できる可能性がある | 学習していない種類は見逃すか別クラスに誤分類 |
| 弱いところ | 正常のばらつきを異常と判定しやすい(過検出) | まれな不良のデータが集まらない |
| 代表的な手法 | PatchCore、PaDiM、EfficientAD、オートエンコーダ | CNN分類器、物体検出(YOLO系)、セグメンテーション |
選び方の3基準
基準1:不良データがどれだけあるか
不良サンプルが各種類で十分な数集まらないなら、異常検知から始めます。量産ラインでは不良率が低く、まれな不良は何か月待っても数枚しか集まらないことがよくあります。キユーピーの原料検査装置は、不良品ではなく良品のパターンを学習し、良品以外を不良とする方式で精度を上げたと報じられています。
研究の世界でも、外観検査のベンチマークMVTec ADの学習データは良品3,629枚のみで、不良画像はテスト用にだけ含まれています。異常検知はこの「良品は大量、不良は少量」という製造業の実態に合った設計です。
基準2:まだ見たことのない不良に対応する必要があるか
新しい材料や新しい工程では、どんな不良が出るか事前に分かりません。分類AIは学習した種類しか知らないため、未知の不良を良品と判定する恐れがあります。異常検知なら、正常から外れていれば種類を問わず知らせることができます。
基準3:出力を何に使うか
「止めるか流すか」だけを決めたいなら異常検知で足ります。一方、不良の種類ごとに処置が違う(傷なら手直し、異物なら廃棄)場合や、不良の種類別の発生傾向を工程改善に使う場合は、分類が必要です。不良コードの体系を決めておかないと分類のラベルが揺れるため、不良コードの設計を先に済ませておきます。
実務では段階的に併用する
多くの現場では、両者を時期で使い分けます。立ち上げ期は異常検知で運用を始め、AIが異常とした画像を人が確認するときに不良の種類を記録していきます。半年から1年でラベル付きの不良が貯まったら、異常と判定されたものだけを分類AIに通して種類を付ける2段構成にします。
設備の時系列データでも考え方は同じです。967件の時系列で71の異常検知手法を比べた2022年の大規模評価では、どのデータにも最適な手法はなく、教師ありの手法が教師なしの手法を一貫して上回ることもありませんでした。手法の詳細は良品学習と不良品学習の比較と時系列異常検知のガイドで扱っています。
よくある質問
不良が数枚しかなくても分類AIは作れますか
数枚では難しいのが一般的です。データ拡張や合成画像で補う方法もありますが、まずは異常検知で運用を始め、不良が貯まってから分類を検討する方が確実です。数枚の不良は、異常検知の評価用に使ってください。
異常検知で出た「異常」の原因は分かりますか
異常検知だけでは原因は分かりません。画像なら異常箇所のヒートマップで位置は示せますが、種類や原因の特定には分類や、工程データを使った要因分析が別に必要です。
異常検知の閾値はどう決めますか
評価用の実際の不良サンプルと正常データで、見逃し率と過検出率の関係を見て決めます。通常は見逃しを優先して抑え、増えた過検出を人の再検査で吸収できるかで判断します。
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