第10回調査の概要:17か国1,560人、2025年3月実施

Rockwell Automation(米国)の「State of Smart Manufacturing Report」第10回は、2025年3月に17か国の製造業関係者1,560人を対象に実施され、2025年6月3日に公表されました。同社は産業オートメーションの大手で、調査は自社の顧客層に近い製造業の意思決定者を対象にしています。

主な数字は次のとおりです(いずれもRockwell Automation発表、2025年6月)。

AI/MLに投資済み、または今後5年で投資予定
95%
Rockwell Automation第10回調査(17か国1,560人、2025年3月実施)
2025年に製品品質へAI/MLを適用予定
50%
同上。品質管理は2年連続で用途首位
「AIを適用する能力」を極めて重要とする回答
約半数
同上。前年は10%
2025年にAIをサイバーセキュリティに使う予定
49%
同上。2024年は40%

このほか、生成AI・因果AIへの投資は前年比12%増、41%がAIと自動化を技能ギャップ・人手不足の解消に活用、48%がスマート製造投資に伴い人員の配置転換・採用を予定、81%が社内外の圧力でデジタル変革が加速していると回答しています。

品質管理が2年連続で首位という意味

AIの用途として品質管理が2年連続で首位だった点は、日本の製造業の関心ともほぼ一致します。外観検査、工程条件と品質の相関分析、不良の要因解析といったテーマは、効果をKPI(不良率・流出件数・検査工数)で測りやすく、稟議を通しやすいからです。

ただし「適用予定50%」は、計画を示す数字です。実際に本番ラインで定着している割合ではありません。日本の工場で品質AIを本番に載せるときに詰まるのは、検査結果や工程条件をロット単位でひも付けるデータの整備です。品質判定をMESに記録していない、検査装置の結果が個別PCに残っているといった状態では、AIの学習データが揃いません。

「AI適用能力」が10%から約半数へ:人材の問題が前面に出た

今回の調査で最も大きく動いたのは、「AIを適用する能力」を極めて重要とする回答です。前年の10%から、ほぼ半数に急増しました。AIの技術そのものより、自社の業務にAIを当てはめられる人材がいるかが課題として認識され始めたことを示しています。

これは他の情報とも整合します。米Traxの記事(2025年12月9日)によれば、製造業の経営幹部の37%が従業員へのスマート製造スキル付与を最大の懸念に挙げています(関連:Deloitte 2026製造業見通し)。AIツールを買っても、現場の課題をAIの問題設定に翻訳できる人がいなければ使われないという認識が、欧米でも広がっています。

41%がAIと自動化を人手不足対策に使い、48%が配置転換・採用を予定している点も合わせて読むと、「AIで人を減らす」より「AIを使う人を育てて配置し直す」方向の計画が多いことが分かります。

サイバーセキュリティへのAI活用が40%→49%

AIをサイバーセキュリティに使う予定は、2024年の40%から2025年は49%に増えました。サイバーセキュリティは、同調査で外部リスクの第2位に挙がっています。

工場のネットワークにAIやクラウドをつなぐほど、OTシステムの攻撃面は広がります。AIを入れる側の論点(データをどう外に出すか)と、AIで守る側の論点(異常通信の検知)は別物ですが、どちらも同じOTネットワークの設計に関わります。AIの導入とOTセキュリティの見直しを同じ計画の中で扱うほうが、後から手戻りが出にくくなります。

投資意向、用途、人材、リスクの4つの区分に調査結果を分類した図 投資意向95%AI/ML投資済・予定+12%生成・因果AI投資 用途50%品質へ適用予定2年連続首位 人材10%→約半数AI適用能力を重視41% / 48%人手不足対策 / 配置転換 リスク40%→49%AIをセキュリティにサイバーは外部リスク第2位
第10回調査の主な数字を、用途・人材・リスクの3群に分けて見る。

数字を読むときの3つの注意点

  1. 意向と実績を分ける:「投資済みまたは投資予定」「適用予定」は計画の数字です。実際に全社展開している割合は、McKinseyなど別の調査で確認します(McKinsey State of AI 2026)
  2. 国別の差を見る:同調査のインド抜粋では、AI/ML投資意向は99%、収集データの有効活用率は53%(世界平均44%)でした。世界平均44%という数字は、集めたデータの半分以上が使われていないことを意味します
  3. 経年比較は同じ設問で行う:前年10%から約半数への変化は大きいですが、設問の表現や回答者構成が変われば比較の精度は落ちます

データ有効活用率の世界平均44%は、日本の工場にもそのまま当てはまる課題です。センサーやMESでデータを集めていても、タグ名がばらばら、時刻がずれている、品番とひも付いていないといった理由で使えないデータが多いのが実情です。AIへの投資計画を立てる前に、既に集めているデータのうち何割がそのまま分析に使えるかを測るほうが、効果の見積もりは正確になります。

よくある質問

State of Smart Manufacturing Reportはどこで読めますか?

Rockwell Automationが毎年公表しており、同社サイトでプレスリリースと報告書の申込みページが公開されています。第10回は2025年6月3日に公表されました。

日本の回答者は含まれていますか?

17か国が対象と公表されていますが、国別の内訳はプレスリリースでは確認できません。日本の傾向と比べる場合は、国内の公的調査と並べて読むのが安全です。国内の数字は製造業のAI導入率の記事で整理しています。

「品質管理が首位」は外観検査のことですか?

外観検査に限りません。調査は「製品品質へのAI/ML適用」をまとめて尋ねており、工程条件と品質の分析や、不良の要因解析なども含まれると考えられます。用途の内訳は公表資料では細分化されていません。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。